セブンスターの煙
原田 充
怠惰とオシャレと髪型と
昨日、三か月ぶりに散髪に行った。
僕は髪型に特にこだわりがなく、オシャレがなんたるかもまるで理解できていない。そのため、髪を生活の中で煩わしさを感じるギリギリまで伸ばして、それを生え始めの坊主くらいまで切ってもらうということを繰り返している。その周期が大体、三か月から四か月に一回訪れるのである。
髪に煩わしさを感じる基準は、シャンプーやドライヤーの時間が長くなっていること、襟足が外へぴょんと跳ねることなどがある。
僕はくせ毛なので襟足がまっすぐと伸びず、ある程度の長さになると重力に逆らい、襟足の先が天を向くようになるのである。三歳から中学までずっと水泳をやっていたため、水泳帽の締め付けで髪に変な癖がついてしまったのではないかとしばらくの間、考えていたが周りの同級生にそのような癖のある人がいなかかったため、生来のものであるのだと納得した。
髪の毛が長いと髪のべたつきも気になる。いくら見た目に無頓着な僕でもべたべたの髪の毛のまま人前に出ることには多少の抵抗がある。女性の前には特に。
僕は頭皮の油の多いほうであるので、前日の夜に熱心に頭を洗っても翌日の夕方ごろには髪の毛が油でべたべたになってしまう。ならば、朝シャンをしたらよいのではないかと言う人もいると思うが、夜勤のバイトをしていることもあり、どうしても朝に時間を作れないことも多いし、夜寝る前にお風呂に入らないとなんだか落ち着かないしでなかなかそこまで踏み切れない。
そんなわけでなるべく短い髪で過ごしたいのだが、これが周りから不評なのである。一度、髪の毛の煩わしさからいっそのこと坊主にしようと弟に相談したところ、「もし、お前が坊主になるなら、俺はお前と兄弟の縁を切る」とまで言われたため断念した。
僕はそこそこ髪の毛が長いほうが似合うようである。
センスも知識もない僕はオシャレに関しては周りの意見を素直に受け入れることにしている。
しかし、煩わしいは煩わしいので最初に書いたように襟足が外へ跳ねるまで髪の毛が伸びると弟に縁を切られるギリギリの長さまで髪の毛を切ることにしている。
そのため、僕の髪型は安定しない。行事の写真を見返すと長かったり、短かったりと節操がない。
髪型が安定している人はすごいと思う。どのくらいの頻度で美容室に行っているのだろうか。僕にはそんな気力がない。
気力はないが、少しでもオシャレのわかる人に近づきたいという気持ちから美容室は少しいいとこに通ってる。ここに臆病な自尊心と尊大な羞恥心の片鱗が見える。
身の丈にあわないと思いながらも、中途半端なところにいくとお坊ちゃんのような髪型になってしまいしばらくの間、周りの目を何となく気にしながら過ごさなくてはならなくなるので、美容室でどのような髪型にしたいか聞かれても「生え始めの坊主くらい短くしちゃってください」としか言えない不器用な僕の意思を言葉を交わさずとも理解してくれる今の美容室を僕は気に入っている。
見た目に無頓着といいながら、執着を捨てきれていない自分が少し嫌でもあるが、人間臭くていいのではないかと最近開き直っている。
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