円の放流

シヨゥ

第1話

「金を使う時は、稚魚を川に放流する気持ちで使っているな」

 彼はそう言うと決済を済ませた。

「日本円という稚魚を、日本社会という川に解き放つ。大きくなって戻って来いよと思いつつな」

「大きくなって戻ってきたことは?」

「それがないんだよな」

 そう言って笑う。

「きっとどこぞのでっかいクマさんが頂いているんだろうよ」

 そう言って指さす先では汚職で捕まった政治家のニュースが流れている。

「でもまぁ流さないことには川から魚が消えてしまうからな」

 そう言うやまた別のショッピングサイトを開く。

「育てては流す、いや蓄えては使う。手元で育てるには限界があるからね」

「循環すると良いね」

「そうなることを願っているよ」

 そう言いながらカートに次々と商品を入れていく。

「使いすぎには注意だよ」

「分かっているって。卵がなけりゃ稚魚にすらならないぐらいはさ」

 そう言って決済画面へと進む。

「どれだけ流せば大物にありつけるんだろうな」

 そんなぼやきを言いつつ、彼はまた決済を済ませるのだった。

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円の放流 シヨゥ @Shiyoxu

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