第89話 帰って来たラン
「と、殿ぉぉぉ!!!会いとうございました!!!」
ノブナガに触れられた闇の塊は一気に霧散し、そこには泣き崩れている森蘭丸がいた。
「俺もだ。なんでお前がこんなことになってる?」
「こんなこととは?」
「なぜ光秀とサルをこちらに呼んだ?」
「明智は必ず殿の手で殺さなくてはいけないですから!!!」
「サルは?」
「秀吉殿も明智に強い恨みを持っていましたので殿の助けになるかと」
「じゃあなぜランに手を出した?」
「ラン?ああ、あの娘ですか。あの女が殿の側にいるのだけは許せません!!!殿のお傍に相応しいのは濃姫様だけです!!!」
蘭丸からどす黒いオーラが吹きだす。
「蘭、お前」
「殿!蘭丸は悪霊となっております。よほど殿が殺されたのが辛かったのでしょう。もう儂らが知っておる蘭丸ではないかと思います」
「悪霊、、、か」
ノブナガは辛そうな顔をする。
「儂も一歩間違えば悪霊となっていたでしょう。明智や蘭丸の様に」
「、、、そうか」
「どうしますか?」
すでに覚悟を決めていた秀吉は蘭丸に向き合って刀を構える。
「いい。俺に話をさせろ」
「そうですか」
秀吉はそう言ってノブナガの後ろに下がる。
「蘭、苦労を掛けたな」
「苦労など!!!そんなことはありません!!!私は殿と濃姫様の幸せだけを!!!それだけを!!!」
蘭丸の目からは涙がこぼれていた。
「そうか」
ノブナガはそのどす黒いオーラごと蘭丸を抱きしめる。
「と、殿!?」
「ありがとう。お前は忠臣だ。誇れ」
「そ、そんなお言葉!!!有難き幸せ!!!」
蘭丸はその場で跪く。
「ただランは返してくれ。あの女は俺にとって何よりも大事な存在なんだ」
「の、濃姫様よりもですか?」
蘭丸は絶望したような顔でノブナガを見上げる。
「帰蝶より大切なものなどない。だがランもまた同じぐらい大事なのだ」
「そ、そんな!!!そんな!!!そんなぁぁぁ!!!!そんなぁぁぁぁ!!!」
蘭丸のオーラは更に吹き荒れ、ノブナガの身体を蝕んでいく。
だがノブナガは動じることなく蘭丸を抱き締めたまま。
「ランを返してくれるなら俺が一緒にお前と逝ってやる。だから頼む」
ノブナガは蘭丸の首元で小さく頭を下げる。
「と、殿!!!お、おやめください!!!そ、そんな!!!それじゃ私がやったことは!!!」
蘭丸は壊れた様に叫び涙を流した。
「泣かなくていい。お前は悪くない。さあ、一緒に逝こう。本能寺の続きだ」
「い、いやだぁぁぁ!!!殿を道連れになど!!!そんなことできない」
蘭丸はノブナガの腕を必死で振りほどこうとする。
「その通りですよ、殿。儂らはあなた様に全てを捧げた者たちじゃ。殿を道連れにするなど死よりもつらいことです」
秀吉がノブナガを蘭丸から引き剥がす。
「森蘭丸。こんなサルで申し訳ないが、儂が地獄へ付き合おう。地獄で殿の話でもしながら酒を飲もう」
「秀吉殿!、、、かたじけない」
「待て!お前ら!」
「我々は元々死人。ここで退場するのがよいでしょう。殿は生きてください。きっと殿にはこの世界でもまだやるべきことがあります!」
秀吉はそう言って満面の笑みを浮かべた。
ノブナガの命令で戦場に行くときにいつも見せた秀吉の顔だ。
「、、、俺の最大の功績はお前を武士にしたことだ」
「なんともったいなきお言葉」
秀吉は満面の笑みを浮かべながら涙を流した。
「殿、申し訳ありませんでした」
蘭丸のその顔は子供の頃に転んでお茶を零した時によく見た顔だ。
「謝るな。お前もまた俺の宝だ」
「ははは、最後にそんな言葉が聞けるなんて、なんと幸せな人生でしょうか」
蘭丸もまた泣いていた。
「それでは殿。またお会いできて嬉しかったです」
「不謹慎ですが、今度こそ殿の横で一生を終えられるのが幸せです」
そんな二人を見てノブナガは目頭を押さえる。
だが涙をこぼすことなく真っすぐな目で二人を見る。
「俺もすぐに行く。待っていろ。地獄でも天下を獲るぞ」
「うっ、、、楽しみにしております」
「今度こそお役に立って見せます!」
「じゃあまたな」
「「はっ!!!」」
こうしてノブナガは現実に、秀吉と蘭丸はこの世界を去っていった。
「ふわぁー。ん?なんか寝てた?私」
「寝坊だ。バカ娘」
目を覚ましたランの前には穏やかに笑うノブナガの姿があった。
*
なんか最近ヤバいんだけど!
ノブナガが何か優しい。
もしやこれが噂のデレ期なのか!!!いや500%間違いない!!!ノブナガは完全にデレている!!!
ということは来週のノブナガ軍オフ会。ここで正式なアレがあるかもしれない。
そうガチプロポーズが!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます