第23話 第六天魔王 ノブナガ

「殿、どうされたのですか?」


「もうすぐノブナガ軍はこの本陣に攻め込んでくるだろう。そしてそうなったら伊達は負ける」


「そんなにすぐこの本陣に攻めてこられるわけありません!」


「普通に考えたらそうだよな」


「何かあるんですか?」


「・・・何もないな。勘だ。だが俺の勘はよく当たるんだ。特に試合中はな」


「し、しかし!」


「この勘がもっと早ければな。撤退して仙台城に籠ることも出来たが、おそらくもう遅いだろう。結局この戦は最初から最後までノブナガに主導権を握られていたな。一度たりともこちらに手番は回ってこなかった」


勝てる。負けるわけない。そう信じて疑わなかった。


たいした作戦などなくても力だけで圧倒できると。


それがこの様だ。


だがまだ最後にやることがある。


失態を晒した愚か者であろうとも、それでも俺は伊達政宗を任された男だ。


本物の伊達政宗の顔に泥を塗らないように、最後までしっかりやり遂げよう。


それに会ってみたい。本物の織田信長のように戦う、このノブナガという男に。





私たちが伊達軍の本陣についた時、家臣たちはみな刀を抜いて立ち上がっていたが、その最奥にどっしりと座る男がいた。


これが伊達政宗・・・まあよく分かんないけど。だって顔見たことないもん。


たださすがの大大名である。威圧感も半端ない。うまく息が出来ない。


「おい、伊達政宗。うちのバカを怖がらせてんじゃねーよ」


ノブナガはそう言うと私の前に出て政宗と向かい合う。その瞬間気分は楽になる。ノブナガが私を守ってくれている。そんなぬくもりを感じた。これこそが愛の力なのだ。


だが今度は逆にノブナガが睨みを利かせた瞬間、刀を抜いていた伊達軍の侍達がカタカタと震えだす。


「さすがだな。とんでもない殺気だ。この距離で耐えられられるのは大名、武将クラスだけだろう」


「伊達政宗か。いい面構えだ。で、お前らはもう負けだが、なにか一発逆転の一手でもあるのか?」


「そんな大層なものは思いつかないな。元々頭を使うのは苦手なんだ」


「じゃあ何で逃げないでここにいる?」


「いやなに、今回の戦はお前たちの術中にはまってロクに戦えなかった。戦わずに逃げるのは俺の流儀に反する。だから最後にせめてあんたとは戦おうと思ってな」


「なぜ俺が来ると思った?」


「勘だ」


「ただの勘に命を賭けたのか。相当なバカだな。でもまあわかった。ちゃんと戦ってやらなくて悪かったよ。だが戦ってのは戦わないで勝つのが一番だ。戦わなきゃ勝てないってのはその時点で戦に向いてねぇんだよ」


「なに!?」


「だからもちろんここでお前と戦う気もない」


ピシピシピシ!!!!


首から上を残して伊達政宗が凍り付く。


「こんな氷!ん!ん!なんでだ!力が出ない」


「よくやった、タロイ」


「お安い御用だ、ボス」


「私と二人でやったんだけど?」


「マカミもよくやった」


「私はタロイのためにやっただけよ」


「なんで力が出ないんだ!」


「マカミは敵の力を封じる氷を出せる。まあ発動するのに時間がかかるらしいがな。だからお前とだらだら話してやってたんだ」


「ノブナガぁぁぁぁ!!!卑怯だぞぉぉぉぉ!!!正々堂々戦え!!!」


「バカか?お前。俺たちは試合してるんじゃない。戦争をしてるんだ。そこに卑怯だの正々堂々だのというものはない」


「貴様!それでも男か!」


「お前こそ男か?部下の命を預かりながらもたいして考えもせず、真正面から攻め込むだけ。お前の兵たちは犬死だ。それにもかかわらずまだ正々堂々とか言ってる始末。同情するぜ、お前の兵たちにな」


「ぐっ!」


「だがせめてもの情けだ。首だけは俺が直々に撥ね飛ばしてやる」


「くそぉぉぉ!!!」


「さようなら。愚かな王よ」


ノブナガは天羽々斬を抜いて伊達政宗の首を斬り飛ばした。


こうしてノブナガ軍対伊達軍の合戦はノブナガ軍の完全勝利で幕を閉じたのだ。





伊達を倒し、合戦が終わってからこちらの世界で数日後。


私はノブナガに呼ばれた。十中八九プロポーズだろう。


「ここからは東北をまとめ上げる。伊達軍の兵たちもしっかりとうちの兵として教育しなきゃいけない。つまりここからは内政パートだ。ラン、お前に出番はない。レベル上げにでも行ってこい」


嘘、だろ、、、?プロポーズじゃ、ない、、、だと!?


「ちょっと何言ってるのかわからない。プロポーズじゃないと理解できない」


「お前こそ何言ってんだ。バカなお前は内政の役に立たないからせめてレベルアップでもして来いって言ってるんだよ」


「またこのパターン?私だって内政ぐらい出来るさ!」


「それをもし本気で言ってるのなら俺は自分の考えを改め、お前のバカさレベルを大幅に引き上げなきゃいけないな」


「うぐっ!」


「バカは黙ってレベル上げしてろ」


「、、、」


、、、私は式神たちとレベル上げに向かうのであった。






ノブナガが伊達政宗を討ってから3年ほど過ぎたころ、東北は完全にノブナガのものとなっていた。


民に自由を与える政策はあっという間にノブナガを人気者にした。民たちはこの前まで侵略者だったノブナガをあっという間に自分たちの王として持ち上げた。


こんなにうまくいく?ってぐらいあっさりとノブナガは東北一帯を完全に支配してしまった。


農民も商人も兵たちも皆がノブナガに心酔した。理由は簡単。儲けさせてくれるからだ。


農民は収穫量が上がり、商人たちは自由に商売ができ高値で売れる焼き物まで回ってくる。兵たちに至ってはこの3年間、戦に出ることはなく訓練だけしかしていないのに以前の倍以上の給料をもらっていた。


国はどんどん豊かになっていく。伊達政宗が統治していたころに不満があったわけではない。ただどちらがいいかは一目瞭然。国力は段違いのように跳ね上がったんだから。


そうなれば民など現金なもので最初は仇のように見ていたノブナガを、国が豊かになっていくにつれて慕っていき、今となっては伊達政宗を超える王として崇拝している。


「凄いじゃん!ノブナガ!東北一帯はノブナガを最高の王として祭り上げてるじゃん!」


「まあ、普通にやればこうなる。そんなことよりお前はがっつりレベル上げてきたんだろうな」


「え!?、、、そ、そりゃまあ私だってこの3年間、ひたすらレベル上げに励むという退屈な日々を送っていたからね!」



キャラネーム ラン


レベル 138


職業 陰陽師


式神 トリ(火之迦具土神)



トリ(火之迦具土神)


レベル 692


スキル 地獄の炎 復活の炎 不滅の炎 破断の炎 識の炎 終末の炎 ランへの忠誠




アニ


レベル 189


種族 コロポックル


スキル 氷漬け 意思疎通 呼び声




イモウト


レベル 175


種族 コロポックル


スキル 吹雪 意思疎通 福の神




「これでどうさ!レベルも結構上げたよ!もうノブナガも抜いてるんじゃない?」


「抜いてるわけねーだろ」


「え!?」




キャラネーム ノブナガ


レベル 302


職業 第六天魔王←NEW




「いつの間にこんなに上げてたの!?内政で忙しかったんでしょ!?」


「だからその合間にレベル上げしてたんだよ」


「、、、解せぬ」


「とにかく国と俺たちの準備は整った」


「じゃあいよいよ!」


「ああ、次は上杉の首を獲りに行く」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る