その手を取ればいいのに……

 その日、夢を見た。



 自分はおりの中にいて、その周りを囲んだ人々がこちらを見下ろしていた。

 檻はかなり頑丈で、彼らが手を伸ばしても絶対に壊れない。



 自分もそれを知っていたから、檻の中から逃げはしなかった。

 助けを求めることもしなかった。



 しばらく彼らを眺めていると、ふいに背後から光が差した。

 後ろを見ると、そこにはイルシュエーレや精霊たちがいる。



 イルシュエーレが手を触れると、それまで絶対に開かなかった檻がいとも簡単に開いた。



 この檻には、扉などなかったはずなのに……



「行きましょう。」



 イルシュエーレが手を伸ばす。

 彼女たちを見つめながら、ふと後ろを見てみる。



 そちら側には相変わらず冷たい目をした人間たちがいて、檻にはひびも何もない。



 人間は、精霊たちに気付いていないらしい。

 檻の反対側が開いているのに、回り込もうともしない。



「さあ。」



 手を差し伸べられ、その手を取った。

 でも……



(あれ?)



 胸がもやもやして、自分はそこから動けなかった。



 このまま、彼女たちについていけばいい。

 そう思うのに……





 ―――そこには何故か、迷っている自分がいた。




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