【奴隷商人】~今更謝ってももう遅い。お前が虐待していたロリ奴隷はオレが全員買い取った。連れて帰って、たらふく飯を食わせてやる。

間野 ハルヒコ

第1話 プロローグ1

「お前が、お前さえいなければ。娘は死ななかったんだ!」

「お前らが加奈子を奴隷のようにこき使うから!!」


 首を絞められている。

 刺された傷口からこぼれる血が止まらない。


 長く伸ばした前髪の隙間から、惨状が見えた。


 メラメラと燃えさかる屋敷、ナイフで刺された親父と、その愛人。

 我先にと逃げ出す使用人たち。


 現代日本を代表するグループ企業、オレのシヴァ・コンツェルンがこんな形で終わるとは思わなかった。


 「お前は人間のクズだ。他人の命を使い潰して利益を吸い上げる、醜いヒルめ! これは当然の報いだ!!」


 男が何か騒いでいる。

 確か、娘を殺されたとか言っていた。


 殺されたというが、自殺だろう?

 ちょっとパワハラされただけで死を選ぶとは情けない。


 その女が特別弱かっただけじゃないのか?


 絞り出したオレの言葉に男が激高する。

 人権がどうのとか、娘はあんな死に方をするべきじゃなかっただのと言う。


 笑わせる。

 オレから言わせれば、人権など弱者が生み出した妄想に過ぎない。


 命は地球より重いとか言う馬鹿がいるが、あれは戯れ言だ。

 しわくちゃの老人より、精悍せいかんな若者の方が遙かに利用価値がある。


 死にかけの病人より、健康な人間の方が使えるのは当然のことだ。


 なぜ事実から目を逸らす?

 答えは簡単だ。弱者は自分の無価値さを知りたくないのだ。


 現実と向き合わず、考えることを止めた豚は食い殺されると決まっている。


 こんなこと23のオレにもわかるのに、この愚かな男は40になっても気づけないでいる。


 考えるだけの頭がないのだ。

 だから、感情的に放火し殺人まで犯してしまう。


 底抜けの馬鹿というのは恐ろしい。

 お前のせいでどれだけの社員が職を失い、首を吊ると思っているのか。


 関連企業が連鎖倒産することの意味を何も理解していない。


 一人だ。

 たった一人死んだだけだ。


 失われたなら補填ほじゅうすればいい。

 ただ、それだけの話なのに。


「馬鹿が、ガキが欲しいならまた作ればいいだろう。」


「このガキが!! 娘は、オレ達は奴隷じゃない!! 数字でもない!! 命は平等なんだ!! なぜそれがわからない!! お前のような奴がいるから……!!」


 奴隷、奴隷か。

 いいなぁ。それはいい。


 そもそも労働者に権利があるというのが間違っている。


 仕事を与えられ、対価として金までもらっているというのに、文句を言うような労働者は全員パワハラで死ぬべきだ。


 意識が薄れていく。

 どうやら、ここまでのようだ。


 もし、来世があるのなら奴隷商人にでもなろうか。


 正しく命に値段をつけ、不要な者は殺し、有要な者だけを生かすのだ。

 この世のすべてにかしずかれ、オレは幸福のうちに生涯を終えるだろう。

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