高塚香奈の章

生きる、ってどういうことだと思いますか?

 白が、どこまでも広がっている。

 無いが有るのか、有るが無いのか、あまりにも存在するもがなんにもない世界。

 風すらも。

 音すらも。

 ひょっとして時すらも、無すらも。


 いや、

 変化は突然、

 一人の小柄な少女が、すんと一瞬にして浮かび上がるようにあらわれていた。


 真っ白な布を全身にふんわりやわらかくまとっており、頭のすぐ上には光の輪が浮かんでいる。

 地に立っているように見えるが、足元に影はなくただ白いのみであり、立っているのか浮いているのかは分からない。

 目を閉じて軽くうつむいている。


 そおっと顔を持ち上げながら、ゆっくりとその目を開いた。

 やわらかな微笑をたたえたまま、彼女は口を開いた。



 こんにちは。

 えっと、みなさんにちょっと質問があって、ここにきました。

 といっても、そんな大したことじゃないんですが。



 生きる、ってどういうことだと思いますか?



 人は、生き物は、どうして生きるのでしょう。

 辛い、死にたい、と思っても、それでも生きようとするのでしょう。

 生命の尽きる最後の最後まで、生きようとするのでしょう。


 結局わたし、分からないままだったあ。

 まあ、大した年数も生きていなかったので、悟れるはずもないんですけどね。

 だからこそ、みなさんに聞いてみようかなと思いまして。


 といわれても、難しいですよね。

 言葉の問題ですし。つまり、どうとでもいえてしまうからこそ、絶対ともいえない。

 ただ、真理というのでしょうか。言葉に頼らない答えも、どこかに存在するんじゃないかと思うんですよね。

 探し続けているとか、そういうわけではなく、ちょっと疑問に思ったというだけなんですけど。


 あ、あっ、失礼しました!

 申し遅れました。

 わたし、たかつかといいます。

 途中で死にますけど、それまでの主人公ってことで、よろしくお願いします。


 前置きは、ここまでにしておきましょうか。

 どんどん、取り留めのない話になっても仕方ないですし。

 さっきの質問の答え、いつか、百年後にでも会えたら、教えてくださいね。



 それでは、わたしたちの物語、スタート!

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