短編:Frying Bird

Take_Mikuru

短編:Frying Bird

〇焼き鳥屋・中・夜


堀井椿(34)と佐伯玲奈(24)がカウンター席に並んで座っている。椿はタン塩、玲奈はつくねにかじりついている。2人の前にはそれぞれ生ビールのジョッキが置かれている。椿は思いっきりタン塩を頬張り、ジョッキを掴んで一気にビールを喉奥に流し込んで再びジョッキをカウンターに置く。


椿「くぅぅぅ!!!!!!!!!」


玲奈が笑いながら椿を見る。


玲奈「椿さん相変わらずいい飲みっぷりっすね」


椿「それはそうよ、しかも今日は金曜の夜だしね!」


玲奈「そうっすよね〜、遂に金曜の夜っすね〜、待ちくたびれたわぁ〜」


椿「金曜の夜のために生きる女だもんな」


玲奈「なんすかその言い方〜、私は週末に生きる女ですよ」


椿「ほぉ〜、で何してんだっけ?週末は?」


玲奈「avでオナニーですよぉ!」


椿の口からビールが噴き出す。


玲奈「お〜い、きったね〜なぁ〜、気をつけろよオメエよぉ!」


椿「ごめんごめん」


椿はおしぼりでカウンターを少し拭く。


椿「てか、お前マジ、週末はavでオナニーしてんの?」


玲奈「だからそうだって言ってるじゃないっすかぁ〜、しつこいですね相変わらず」


椿「いやいや、だから冗談でしょって言ってんじゃん。なぜ君ほどのいい女がそんなことする必要あんの??そこらへんのイケメン引っ掛けてセックスしまくればええやん」


玲奈「だからそれができねーんだよぉ!!!そこら辺のイケメンひっかからないんだよぉ!!!もう全っ然ひっかからねんだよぉぉ〜お〜もぉ〜イヤだよもぉ〜〜」


玲奈はカウンターに顔を埋めて唸っている。椿は焼き鳥を食べ、玲奈を見る。


椿「それって具体的にどうひっかけてんだよ?引っ掛け方に問題あんじゃねーの?おい、なぁ、聞いてんのか?なぁ玲奈」


玲奈が顔を上げると、玲奈の顔が牛になっている。その状態で玲奈は椿を見て何か言っているものの、全て「もぉ〜、もぉ〜」としか聞こえない。椿は一瞬声を失ってからとてつもなく大きな悲鳴をあげる。


椿「うあああああああ!!!!!!なんだコイツぅ!!!!!きもちわりいいいい!!!!!」


玲奈が「もぉもぉ」言いながら顔を近づけてくる。椿はもう泣きながら大絶叫し、逃げようとするが、脚が絡み、そのまま床に落っこちてしまう。椿が泣きながら上を見ると、玲奈が椿を見ながら手を差し出している。椿はそれを見てさらに泣きながら悲鳴を上げる。玲奈はゆっくり椿に近づき、体を起こす。椿は泣きながら席につく。すると玲奈がスマホを取り出し、少し打ってから椿に画面を見せる。画面には、「私の顔、どうかしましたか?」と書かれている。椿は泣きながら口を開く。


椿「うし!うしっ!!!」


玲奈は不思議そうに椿を見てからスマホのインカメで自分の顔を確認する。自分の顔を見た瞬間、玲奈は激しく「もぉもぉ」叫び出す。それを見て椿がさらに取り乱す。そこに店員さんも来て、玲奈の顔を見るなりに大きな悲鳴を上げる。遂に椿が肉の刺さっていない焼き鳥棒を掴み、叫びながら玲奈の目にブッ刺す。玲奈は大きな「もぉ」を上げる。椿はすかさず違う焼き鳥棒を叫びながら玲奈のもう片方の目にブッ刺す。玲奈は大きな「もぉ」を上げ、地面に倒れる。店員は青ざめた顔で玲奈を見ている。すると椿が玲奈のビールジョッキを一気に飲み干し、店員を見る。


椿「お兄さん、牛タンイッチョ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

短編:Frying Bird Take_Mikuru @Take_Mikuru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ