短編:ポップ

Take_Mikuru

短編:ポップ

〇映画館・中・夜


林卓司(37)と皐月うずら(15)が映画館の前の方の席に並んで座っている。林の膝にはポップコーン、うずらの膝にはナチョスが置かれている。2人はそれぞれ食べながらスクリーンを見ている。少しすると映画館が真っ暗になり、本編の上映が始まる。うずらはカリカリ、ムシャムシャ音をたてながらナチョスを食べ、卓司の方を向く。


うずら「いよいよ始まるね」


卓司は少し「え?」という顔をしながらうずらを見る。


卓司「うん、そうだね」


卓司はすぐにスクリーンに目線を戻す。スクリーンには配給会社のロゴが映し出されている。


うずら「ねぇねぇ、卓司ってこのシリーズ好きなんだっけ?」


卓司はまたもや「え?」という表情でうずらを見る。


卓司「うん、そうだよ」


卓司はすぐに目線をスクリーンに戻す。


うずら「ねぇ〜ってば、このシリーズって面白いの?」


卓司は信じられないものを見る目でうずらを見る。


卓司「嘘でしょ?」


うずら「うん?なにが〜??」


卓司「映画、始まってるよ?」


うずら「うん、だから先に進んじゃう前に聞いてるんだよ?」


2人が座っている列の端っこから舌打ちをする音が聞こえる。卓司は舌打ちが聞こえてきた方向を見てからうずらに目線を戻す。


卓司「迷惑だから、映画終わってから話そ?」


うずら「いやぁ〜だぁ〜、今がいい〜、だってうずらたちお金払ってるんだよ〜?」


卓司「お前払ってねーだろ、全て俺が払ってんだろ、てか他の人はちゃんと自分で払ってんだよ、だから頼むから黙ってくれ」


卓司は苛ついた様子でスクリーンに視線を戻す。スクリーンでは本編がバリバリ始まっている。うずらがぐずる子どものような声をあげながら体を揺らし始める。


うずら「卓司〜」


卓司は物凄い形相でうずらを睨みつけながら言う。


卓司「うるせぇ!!!!!!」


スクリーン全体の空気が固まる。なぜか、本編も一時停止される。


拓氏「黙らねーとぶっっ殺すぞ」


卓司は激しく呼吸しながらうずらを見ている。少しすると、卓司は周りを見て、何度か頭を下げる。


卓司「あ、すみません、すみません」


スクリーン全体の空気が元に戻り、本編も再生される。卓司はスクリーンを見ながら大きく深呼吸をする。少しの間沈黙が流れる。突然うずらが卓司の上に跨ってくる。


うずら「ねぇ〜、しよ?うずら飽きちゃった」


卓司「ふざけんな、ちょうど今展開したところだろ、さっさと降りろ!」


うずら「うううん、いや〜だ」


うずらは腰をクネクネしながら卓司に顔を近づける。卓司はうずらの肩を掴み、降ろそうとするが、うずらが物凄い力で卓司の頭を掴み、思いっきりキスしてくる。卓司は唸りながらうずらを揺らすもびくともしない。うずらは楽しんでいる様子で嬌声を上げている。卓司は散々もがいた末、うずらの首を両手で掴み、一気に締め上げる。さすがのうずらも苦しそうに唸り始める。卓司は血走った目でうずらを見ながら物凄い力で首を締め上げ、うずらから顔を離す。


卓司「映画の邪魔をするなぁ!!!!」


卓司はそのままうずらを締め上げ、うずらは苦しそうに目を閉じながら息耐える。卓司はそのままうずらを床に振り落としてから立ち上がり、周りを見渡す。


卓司「みんなやったぞ!!奴を殺したった!!もう邪魔者は完全に排除した!!思いっきり映画を楽しもう!!!」


その他の観客「うおおお!!!!!」

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