いとしのセシリア

@9zth7DcB

第1話

レズビアンなのか?と訊かれたら、多分ちがうんじゃないかなと答える。

レズビアンとは、あくまで私の定義では、セックスをしたいと思う相手が男性ではなく女性である女性のことだからだ。

もっと言えば、セックスをしたいと思う相手を夢想するときに、男性より女性の身体を思い浮かべる女性たちのことだ。

だから私はレズビアンではない…と言い切るのも躊躇する。

なぜなら女性に対して、友情でもないが相手を欲しいと思う気持ちになったことがあるからだ。

きっとそういう女性は多いことだろう…レズビアンだと自認するのはおかしいが、かといって特別な同性を頭の中でどう処理をしていいのかわからない。

彼女は30年以上前に、突然私の目の前に現れて、数年付き合って、ある日雨の中に消えていってそれっきりになった。

彼女がロンドンに一人旅をした時に帰国してから「あなたにもお土産があるのよ。お茶のセットなんだけどね」と電話で話した、そのお土産はどうなったのだろう、手にとって見てみたかったと思う。

30年以上前のことなのに、なぜそのまだ見ぬ"お茶のセット"がいまだに気になるのか?

彼女は日本人であり、日本名があるが、便宜的にこの小説ではセシリアにしておく。

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