53.こん棒エンジェルス

「その、こん棒エンジェルスは、聴かれてもいないのに、ベラベラしゃべってるそうです。

 今回の攻撃を試練である、と言ってます。

 私たちは、それに耐えなければならない、そうです」

 安菜の報告が終わった。

 試練、か。

 きっと、安菜が着ているはーちゃんもふくめて。

『こん棒エンジェルス・・・・・・』

 そうつぶやいたのは、朱墨ちゃんのパパ。

 フォクシン・フォクシスの副隊長、九尾 大さん。

『それが、俺たちの相手・・・・・・』

 そう言ったら、この場にいるみんなが、静まり返った。

 このままでは何もはじまらない!

 私から聴いてみよう!

「それで、相手が日本語を話すのは、確定済みなの? 」

 安菜は、ひとしきり自分のモニターをみて。

「そうだよ」

 異なる世界でも同じ言葉が通じるのは、時空の謎だよ。

 それでも相手が、こん棒をありがたがってるのはわかる。

 不気味な感じ・・・・・・。

 

 そう言えば、バースト以前のマンガでほ、英語と日本語を安易にくっ付けた名前がギャグの対象になってた。

 この20年で私たちの名前へのセンスはずいぶん変わったらしい。

 タイムスリップとかして、20年くらい前の人が来たら、パーフェクト朱墨も笑われるのかな。

 それは、イヤだな。

 

「航空部隊の出動が、はじまりました」

 安菜の説明がはじまった。

 なんだ。航空機、飛べるじゃん。

 ネットで作戦を考えたり、情報を集めたりするE部門。

 そこが中心になって、航空部隊をそれぞれの基地に集めたの。

 そこの近くの体育館を結んで、運動会。

「航空自衛隊の小松基地からは戦闘機が。

 F ー15 とF ー35。

 新開発の七星シリーズが来ます」


 七星シリーズは、パーフェクト朱墨や北辰と同じ、暗号世界からの輸入品ロボット。

 人型と戦闘機型に変型するんだ。

 たしか今日、アーリンの騎士団の副団長がいないのは、そっちを見に行ったからだっけ。


 そのとき、分厚い装甲を突き抜けて、風を押し退ける音とエンジン音がきこえた。

「もう来た! 」

 

「安菜、いいオペレーターだね。

 加速でダウンも役に立つとは、驚いたよ」

 とほめたつもりだったのに。

「瞬間、15Gの加速よ! 」

 なじられた。

 1Gが地球の重力と同じ。

 15Gは体重が15倍に感じるわけだ。

「体がミンチになる! 」

 ・・・・・・なってないじゃん。

「おだまり!

 それはあんたの手柄じゃない!

 ウイークエンダーに自分の体細胞を培養して建造してくれた、魂呼さんのおかげ!

 それでも、激痛が走る! 」

「私としても、気をつけたつもりなんだけどね」

 魂呼さんを捨てた母親が、唯一残したものが、あの人の体。

 重力を自在に操り、搭乗者を守るのもその能力の応用だよ。

「文句なら敵に言ってよー」

『まあまあ』

 そう言って止めたのは、朱墨ちゃんのパパ。

『せめてもの気晴らしに、訓示をいただこう。

 いらだちを言葉にするのは、エネルギーがいるがスッキリするぞ』

 ラポルトハテノで、ガラクタを売り付けられてたとき、朱墨ちゃんのパパは店員に怒鳴った。

 それは、そんな意味があるのか!

 ・・・・・・マネしたくはないな。

「へんな訓示ですね」

 安菜、そのわりに乗り気みたいだけど。

「まあ・・・・・・」

 黙ったのは、ほんの一瞬。

 だけど、こういう時の彼女は真剣に考えるんだ。

 知ってる。


「こん棒エンジェルスが、こん棒をありがたがってるのは確定です。

 でも、そのこん棒が何を引きおこしましたか?

 先日、ハテノ市に大量のこん棒が送りつけられました」

 静かな、だけど緊迫した空間が、私のすぐ後ろから発生してる。

 威厳さえ感じてる。

「その時は無事に下ろすことができました。

 しかし、全国ではどうでしょう?

 無事下ろしたり、撃ち落とすことなどできません。

 うさぎ、MCOは取りついた機械の性能をあげる。

 だけどそれは、機械の性能を無視した動きはできない。

 そうだよね? 」

 ええ。その通り。

「つまり、こん棒にどれだけMCOが込められていても、空を飛んだり、落下速度を落としたりはできない」

 声が、熱を帯びてきた。

「今や、こん棒は毎日、2、3ヶ所は落下する。

 怪獣事件さえ、週1回です! 

 これはもう、私たちの対処能力を越えています!

 向こうは特訓のあと、私たちから称賛を期待しているのかもしれません。

 ですが、そんなものは、間違いだったと思い知らせていただきたいのです!

 以上です! 」


 お、おお~。


 どよめきだ。

「もしかして。

 失礼なことをしましたか? 」

 安菜がとまどってる。

『いえ、これまでいろいろ言う人はいました。

 武器を使うことを嫌う人や、むやみに犠牲をださないように、とか』

 驚き声なのは、しゅうじさん。

『なんと言うか、バクゼンとした話ばかりだったんですよ』

 なんだか、いえ、かなり筋金くんに雰囲気にてるな。

『誰に何をするのか、明確だ!

 しかも痛め付けることは、しないように釘を刺している! 』

 感動のあまりなのか、涙声になってる。 

『さすがです!!

 このことは、上に陳情させていただきます! 』

 安菜・・・・・・えらく出世したね。

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