しない

ハメリュ

第1話

昨日の夕方から昼間は30度を超える気温が続いている。

毎日、布団の上だけで生活している86歳の俺の母親は、トイレの時だけ四つん這いで、ゆっくり動き出す。

昔からのせんべい布団は、多分もうどこにも売ってない。

どんなに日本が裕福なバブル時代があったと言っても、貧乏は貧乏。

田舎は田舎。

俺らは、何も変わらないんだ。

上は肌着だけ、ボロボロの肌色の下ズボンを履いて。

靴下は半分脱げていて、毛玉だらけで、かかとと親指は穴が空いていて毛糸だ。

こんな暑いのに、服や靴下は冬とおんなじなんだから、どうしようもないなと思っても、自分も面倒で、声もかけない。

これが、いつオムツになるのか、俺が替えるのかと思うだけで、これ以上生きてても楽しいこともねーなと、嫌になる。

毎日、同じことの繰り返し。

田んぼに行って、水の具合見て、畑に行って草取って、トマトときゅうりは農協に出して、買い物して、夕飯を食べて、○五郎をコップ3杯お茶を割って飲んで寝るだけ。

きゅうりの浅漬けは、最高だ。

もちろん、俺が作ってる。


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