第15話 何処に泊まるの?
太宰府を後にした僕らは、西鉄電車に揺られている。
上り電車は、この時間、まだ比較的空いているようで、僕らは二人掛けシートに座ることができた。左右には、長閑な景色が流れている。本来ならこの景色を楽しみたいところだけど、今の僕にはそんな余裕は無いのです。
僕の頭の中で『どうしよう…』が何度も回っている……。
事の発端は、太宰府天満宮の敷地内にある茶屋で昼食を食べた後、境内を散策している時、何気なしに彼女に尋ねた一言から始まった。
「今日は、何処に泊まるの?」
僕は、彼女にどのホテルに泊まるのかと聞いた。
これから、彼女をそのホテルに送り届けてから、実家に帰ろうと思ったからだ。だか、彼女の答えは全く予想だにしないものだった。
「はい?ホテルは取ってませんが…」
「えっ!?」
僕は、もう一度、言葉を発する。「えっ!?」
一体、どうするつもりなのだろうか?
「えって、、。もしかして、私にホテルに泊まれということでしょうか?」
彼女はジト目で僕を見つめる。
そんな目をしたって、駄目なものは駄目に決まってます!
「だって、僕の実家はさ、ほら、凄い田舎だし狭いし、風呂もトイレも汚いし、、。到底
僕は、本当は来て欲しいけど、色んな理由があって駄目なんだよという事が伝わるように、わかりやすく説明する。
だが、彼女はそんなことは全く意に問わないらしく、強い口調で反論する。
「そんなの、全く、構いません…。だって、今回の旅行は、宮畑君と一緒に過ごすというのが大命題なので、私がホテルに泊まったら元も子もないじゃないですか?」
『と、言われましても……』
僕は、心の中でこの言葉を呟く。
だって、そうでしょう?僕がこのまま彼女を連れて帰ったら、母さんは絶対に腰を抜かすだろうし、もしかしたら、近所に住んでる親戚まで集まってくるかもしれない。
せめて、僕の彼女ですと紹介できるならまだしも、そういう関係では無いし…。ほんとに困ったぞ…。どうしよう……。
「宮畑君の実家はどこの駅で降りるんですか?」
彼女は、スマホの乗換案内を開くと、検索をする気満々だ。
「えっと、
「へー、宇美か〜。今が天神だから、宇美駅までは、約五十分ですね。凄く楽しみです。宮畑君の実家!」
あー、結局、彼女の言うとおり物事は動いて行く。せめて、母さんにはラインを入れておくか。でないと、本当にやばいかもしれない。
ん?でも、待てよ…。女の子を連れて行くなんて伝えると、それこそ僕らが実家に着いた頃には、『親戚一同勢揃い』みたいになっている可能性があるぞ。
とすれば、今は何も動かない方がいいのか…。
僕は、この数秒で、色んなシミュレーションを行う。元々、僕は、こういう先の先を考えるのが好きなのだ。でも、いつもネガティブな事ばかりを思い浮かべるから、恋愛に対してもダメダメ君になってしまうのだろう。
果たして、今回はどうなるのだろうか?
それは、神様しかわからないだろうな。だからこそ、僕は、さっき太宰府天満宮で、五百円を賽銭箱に投げ入れて、自分の思いが成就するように本気で祈ったのだ。
正直、こんな大金を賽銭箱に入れたのは初めてだったし、絶対に願いが叶うに違いないと何故か根拠のない自信が自分の身体の中に満ちていた。
『やばいな。あと、五分で着いてしまうぞ。何て言おうか?』
そんなことを考えていたら、彼女が急に小走りになる。
「あっ!!宮畑って書いてある!あの家ですね〜。うわぁ〜、大きくて綺麗じゃないですか〜。宮畑君の嘘つき〜!」
彼女は、天使か、小悪魔のどっちなのだろう?
『ほんとに、、僕はどうしたらいいの〜〜!!!』って、心の中で叫ぶのは、これで何回目?
To be continued…
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