第3-1話
やっと着いたか…。煙突がついたレンガの家に近づくと横には小屋が2つあった。そして、その周囲には柵が張られその中に牛が2頭いた。家から少し離れた畑には人影があった。僕は2つの人影に近づいていく。その人影は親子の様で、一人は成人の男性で髪は赤に近い茶髪でツンツン頭、目は切れ長、腕の筋肉が引き締まっている細マッチョの男性だ。もう一人は幼稚園児ぐらいの子供で、髪はくせっ毛、おそらく父親譲りの茶髪を肩まで伸ばしている少女だ。二人は畑の雑草をとっているようだ、そんな二人に話しかけてみる、
アキラ「すみません。」
僕が声を掛けると、子供はポカンとして、大人はギョッと驚いた顔をした。そりゃそうか、こんな泥だらけでボロボロの男が山から現れたらビックリするよな。
アキラ「こんにちは、あの〜、何か食べ物を分けて貰えませんか?」
男「こんにちは、どうかしたんですか?」
アキラ「実は、昨日、そこの山で遭難しまして。」
男「遭難!? ああだから、そんなボロボロの状態なんですね。」
アキラ「ええ、それで昨日のお昼から何も食べてなくて、お金を払いますので何か食べ物と水を分けていただけますか?」
男「それは大変でしたね、わかりました!でしたら我が家に来てください。」
そう言うと、子供に「おいで」と言い手を引いて、僕を家に案内してくれた。
男「おーい!」
家の扉を開けて中の人物に呼びかける。僕は扉の前で服に付いてた泥を出来るだけ落とす。
すると、台所から女性が出てきた。ブラウン色のウェーブがかった髪が腰まで伸び、目鼻立ちが整っている少し肌が焼けた美人で、白い前掛けをした服を着ている。
女「あら、お客さん?」
男「いや、こちらの方は中央山脈で遭難してたんだって。で、昨日の昼から何も食って無いらしいから、悪いけど、何か簡単なもの作ってくれないか?」
女「そうだったんですか、それは大変でしたね!」
男「ああ、風呂に入れさせてる間に作ってやってくれ。」
そんな会話が聞こえてきた。
アキラ「いえいえ、そこまでお世話になる訳には!」
さすがに人の家のお風呂まで借りるなんて!?
男「いいから、いいから。気にするなって! 風呂場はこっちだ。」
家に入ったら男の言葉遣いがフランクになってきたな、その方がこちらも気を遣わなくてありがたいが…。
アキラ「…それでは、すみません。お邪魔します。」
女「は〜い、どうぞ。」
奥の部屋に案内されて、男に「ちょっと待っててな。」と言われ待ってると、
男「お待たせ!」
そう言って、水の入ったタライを持ってきた。
男「お湯沸かす時間無かったけど、昼間だから水でもいいだろ?」
ああ、この世界では風呂は水浴びみたいな概念なのか。水でも入れるっちゃ入れるが、少しだけ寒いから、お湯の方がよかった。だが…
アキラ「ええ、大丈夫です。ありがとうございます!」
………言えなかった。
男「服脱いだら、その籠の中に入れといて扉の前に置いてくれ。今、体拭く手ぬぐい持ってくるから先に入っててくれ!」
アキラ「何から何までありがとうございます、それではお言葉に甘えて。」
まあ正直、体を洗いたかったから嬉しい。僕は服を脱ぎ、扉の外に置き水浴びをした。やっぱりだが、少し寒かった。
風呂場は垢すりやシャンプーなどは無く、ただ石鹸が置かれただけだった。僕は、その石鹸で髪と体を洗う。しばらくすると扉の外から声がした。
男「服汚れてるから洗濯するよ。代わりにオレの服を置いてくから着てくれ!」
先程の男性の声だ。さっきからお世話になりっぱなしだ。
アキラ「すみません、ありがとうございます。」
男「お〜う。」
僕は10分ぐらい水浴びした後、お借りした服に着替えようとした。その時、気付いたが小袋の金貨を置きっぱなしにしていたな。そこまで気が回っていなかったのもあるが…。
中身を確認したが取られては無さそうだ。ほっと一安心したところで着替えてリビングに向かった。
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