Day28 しゅわしゅわ

 夏祭りの準備で、瓶のラムネが大量に祖父の家に届いた。祭りは三十一日、日曜日に行われるらしい。

 私は準備に追われる祖父の手伝いをしていた。といっても内容は簡単。家に届いた分のラムネをトラックの荷台に積むこと。積まれたラムネは後で祖父が集会所まで持っていくらしい。

 最後の一ケースを荷台に積み上げると、祖父が結露のついたラムネを一本私に差し出した。

「もらっていいの?」

「あぁ。問屋の兄ちゃんがオマケで付けてくれたやつだから気にするな」

「ありがとう」

 ラムネは芯まで冷えているようで、手に涼しさがもたらされる。そのまま栓を抜いて、蒸された身体の中に冷たいそれを流し込む。

 内から冷えていくこの感じが堪らない。暑い夏にはぴったりの代物だ。

 瓶の中では気泡がしゅわしゅわと弾けている。

 太陽の光に照らされ、キラキラと輝く瓶の中を気泡が昇っていくその姿は健気でありながら、明媚に見えた。

 人生というものも、こんな風なのだろうか。自分のために限りある時間の中で輝いて、他人の記憶の中に自分を遺す。なんだか、それとラムネは一緒に見えた。

 でも、私はラムネのようにはなれない。『終わり』のタイミングを窺う私は、そんなキラキラと輝くものと一緒にしてはいけない気がする。

 私は一緒になれない無念さを、刺激の強い炭酸と一緒に飲み干した。

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