Day11 緑陰

 縁側から見える庭には、さまざまな植物が植えられている。赤松に犬柘植、山茶花。知らない名前の庭木も多くある。

 生き生きと映える緑が生む影を見つめ、私はぼんやりしていた。傍らには氷の入った水出し煎茶が置かれている。

 時期的に新緑とはもう言い難いが、木々の色が鮮やかで本当に綺麗だった。緑陰には力強い『生』が感じられる。これから来る茹だるように暑い夏を乗り越えていこうとする精力的な姿が目に眩しい。

 太陽が南に上がり、随分暑くなってきた。何もしていなくても汗が滲んでくる。

 あの木々たちのようにきらきらと輝ける生を送れているわけじゃない。私の手の中には何もない。本当に何もない。できれば『終わりたい』とまで思っているのだ。緑の作り出す『光』が目に辛過ぎて、少し背けてしまいそうになる。直視するのが難しくなるほど、庭の緑は眩しく映った。

 草木はどうしてあそこまで輝いて生きられるのだろう。私は目を伏せた。どこか、自分が惨めであるように感じる。耐えられないわけではないが、居心地は悪い。

 あの時、黄昏の屋上から飛び降りていれば、今頃祖母に逢えていただろうか。きっと逢えたとしても、怒られていたかもしれない。咲紀にはまだ早い、と。

 私はいつになったら『終われる』のか。

 不快な暑さが身を包む。私はそれを煎茶と一緒に喉へ流し込んだ。

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