【グロ注意】不倫疑惑
「ほら、わたしのスマホ見て」
ー あたしは彼女が差し出したスマホ画面をのぞいた。
『今日も遅くなるから…食事も会社で食べるから、先に寝てて良いよ』
「…主人からの
― うーん完全に怪しいわね…。ほんとに仕事してるのかしら。会社に電話してみればどう?
「それは絶対ダメって言われてるの。会社に迷惑掛かるからって。あと、主人の個人携帯に電話するのも控えてほしいって…」
― えー何それっ!おかしくない?夫婦でしょ?あなた達結婚したの、つい最近じゃなかったっけ?新婦友人のあいさつで、あたしがスピーチしたあのときって何年前…まだ2年前くらいじゃない?
「そうよ。まだ新婚の部類じゃないかしら?あたしは、そろそろ子どもが欲しいって主人に言ってるんだけど、『疲れてんだ。今日は無理。仕事が落ち着いたらね』…って毎回断られちゃうの」
― 言いたくないけど…、あたしは「女」だと思う。あの男…卑怯者、許せない。親友として力を貸すわ。あんたの旦那、尾行してみる。明日は日曜だけど、また外出するのかしら?
「多分。今月に入ってから、金曜の夜は帰宅せず、土曜の夜遅くに帰宅。日曜は朝から出かけちゃうパターンなの」
― 分かった。「決定的瞬間」を写真に撮ってやるわよ。私に任せて!
≪翌日、朝8時08分≫
昨日訪れた親友の自宅前。あたしはキャップを深くかぶり、マスクでほぼ顔全体を覆っている。多分、旦那さんはあたしの顔なんて覚えてないと思うけど…念のため。あっ出てきた。
「今日も忙しいから、もしかすると帰れないかも知れない。いつも悪いね。じゃあ、行ってきます」
ー …しらじらしい。女と外泊するための伏線か。まあ良いわ。絶対その瞬間を撮って、この男に突き付けてやる。
あたしは彼の後をついて行った。
ー そうか…オフィスラブなのかも知れない。だとすれば女も来るはず、それとももう、先に出社しているのか?
あたしは今日、とことん見張ることにした。彼はやがて、このビルから女と一緒に出てくるはずだ。その瞬間を、このカメラで激写するのだ。離婚になったときも、裁判では有力な資料になるであろう。
時刻はもうすぐ正午。カメラを手に、ずっと見張っていた。やがて起こるであろう「決定的瞬間」を、あたしは待ち続けた。
!!!一瞬のことだった。ビルから何か黒いものが落下した。カメラを構えたあたしの前で、「グシャッ!」という音とともに、その物体は潰れてしまった。大きなスイカを上から下に落下させたときのように、その物体から様々なものがコンクリートに散らばった。
…震える手で、私はカメラのシャッターを切った。
ポケット内でスマホが鳴っている。しばらく動くことができなかった。スマホは鳴り続ける。着信画面を見る。例の親友からだった。
「どうしよう、大変なの!主人の机に、遺書が置かれてたの。
『仕事に疲れた。ごめん、先に
って書いてあるの。…あなた、今どこなの!」
― …旦那さんの前にいるわよ…本当に撮っちゃった。あなたの旦那の「決定的瞬間」を…
《
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いわゆる過重労働により、うつ病を発症した社員の自殺話である。
ストーリーに登場する「主人」=「旦那」は、決して不倫などし
ていなかった。日頃は遅くまで残業、さらに土日も出社しなければ
ならない程の激務が続き、とうとう自社ビルから飛び降り、死亡した。
「主人」は潔白だったのだ。
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