第十四話

 明善が次に目覚めたのは、病院のベッドの上。明善の目が開いたことに気がついた母は慌てて医者を呼びに行き、医者と看護師達が駆けつけた。その後、明善は色々な検査を受けた。身体中に打撲や切り傷、注射針の跡があったが、命に別状はなし。ただ破傷風の恐れや体内から検出された未知の薬物があるため、数日入院することとなった。

 翌日には刑事達が明善を訪ねて来た。明善を含めた子供達が一週間程前に行方不明になり、必死の捜索の中、明善があの廃工場で発見。刑事達は他の子供達の行方を探そうと、明善に事情を聞きに来たのだ。明善は素直に、全ての出来事を話した。だが、刑事達は首を捻るばかり。だが、それも無理からぬ話。別の世界に無理やり拉致されて、そこで人体実験をされたと言われても、信じられるわけがない。刑事達は明善が拉致・暴行されたショックから、記憶が混濁してしまったのだと判断。質問を犯人達の特徴についてに変更し、明善から聞き出した数名の人間を全国指名手配とした。特に紙芝居おじさんという人物に対しては、多額の懸賞金を懸けた。

 その後、両親からこの県で同時に子供の集団行方不明事件が発生したと聞かされる。あの日、拉致されたのは廃工場にいた子供達だけではなかったのだ。被害に遭ったと思われる子供の数は五十人にも上る。警察は明善が証言した異国風の人間から、外国マフィアによる人身売買事件と判断。各国やインターポールに協力を求めた。

 この事件は全国を騒がせ、マスコミは連日報道。特番を組み、大規模な捜索も行なった。

 唯一の帰還者である明善にも取材の申し込みが殺到したが、まだ小さい子供ということで病院や警察は徹底的にマスコミをブロック。明善が退院した後も、事件については一切言及するなと両親から言われ、久々に学校に登校した時も周りには風邪を拗らせたと嘘をついた。

 世間を賑わせた怪事件も一年を過ぎる頃には、他の事件に塗りつぶされてしまった。思い出すようにたまに事件が報道されるだけ。

 そして、更にその数年後だ。例の高校集団行方不明事件が発生し、異世界の存在が確認されたのは。

 それ以降、過去の行方不明事件や、迷宮入りした不可解な事件が徹底的に見直される。それは明善が巻き込まれた事件も例外ではない。再び刑事達が明善を訪れ、当時の話を聞かれた。今度は刑事達も真面目に明善の話を聞いてくれたが、それでも子供達を見つけることはできなかった。異締連にも問い合わせたが、元凶と思われる異世界は見つからず。

 そして、明善はあることを決意した。明善の親友を含めた子供達を自分の手で見つけようと。自分達に酷いことをした奴らをブタ箱にぶち込んでやろうと。それから明善は必死に勉強し、異世界関連の事件を追った。異世界の情報が書かれた新聞や書籍を片っ端から読み漁った。そして、地元警察の異世界犯罪対策課に配属され、日々事件を追う傍ら、親友達の行方を探している。これが明善が異犯対にいる理由だ。

 明善だけじゃない。愛美もだ。彼女は明善と小学校時代の同級生。そして、当時拉致された子供達の中に愛美の兄がいた。愛美もまた兄を探すために、異犯対に入ったのだ。

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