第十三話
廃棄処分。
当時の幼い明善にも、それがどういう意味かわかった。殺されるのだ。彼らにとって、役に立たないから殺されるのだ。明善はみんなから離され、一人独房に入れられた。
疲労から意識が混濁するも、死の恐怖から明善はひたすら泣いた。
家族にもう会えなくなる。おいしいものも食べられなくなる。
部屋の隅で泣く明善に、女性の声。
「君、君、大丈夫かい?」
振り向くと、若い銀髪の女性がいた。彼女は明善を抱き寄せ、頭を撫でる。
「ごめんなさい。君たちを私達の世界の都合に巻き込んで。本当にごめんなさい」
彼女は泣いていた。泣いて明善に許しを乞うた。
「私にできることは君を逃すことだけ。明日、君は処分されてしまう。その前に君を元の世界に返すから。さあ、行こう」
銀髪の女性は明善を独房から連れ出し、とある部屋に連れていった。その部屋には石で作らされたアーチ状の物体が鎮座。女性が呪文めいた言葉を唱えると、アーチが淡く光り、光の扉が開かれた。
「あのゲートをくぐれば、君は元の世界に帰れる。大丈夫、彼らが気がつく頃には、こちらとの行き来できる距離を超える。しばらくの間はゲートを開けない。さあ、行って! 早く!」
女性に促されるまま、明善は疲労困憊の身体を引きずり、ゲートを潜った。
目の前に広がるのは、廃工場。明善達が拉致された場所だ。ただ空は白んでおり、時間帯は早朝。
「……帰ってこれ、た」
明善は元の世界に帰って来れた安堵感から、気が緩み気絶し地面に倒れ込んだ。
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