第45話


 カーテンを閉めずに眠ってしまったせいで、室内には朝の光が注ぎ込んでいた。

 眩しさに眉間を寄せながらそっと瞼を開いて、目の前に広がる景色に一気に頬を赤らめる。


 服は着ておらず、下着すら身につけていない状態。お互いの肌には赤い斑点が刻まれていて、あのまま行為が終わって眠ってしまったのだろう。


 散々体を舐められているため、本来だったらシャワーを浴びなければいけなかったというのに、慣れない快感に意識を飛ばしてしまったのだ。


 「おはよう」


 一足先に目を覚ましていた彼女が、愛おしげに朝の挨拶をしてくれる。額にキスを落とされるが、目のやり場に困ってしまっていた。


 昨晩は蘭子がリードされてばかりで、結局律のことはあまり気持ちよくさせて上げられなかったのだ。


 「……すごく可愛かった」

 「私だって律のこと可愛がりたい」

 「また今度ね?」


 向こうにばかり余裕があって、自分は翻弄されっぱなし。蘭子だって律を可愛がりたいというのに、その想いはあまり伝わっていないらしい。


 拗ねたように頬を膨らませていれば、ご機嫌を取ろうと優しく髪の毛を梳いてくれる。


 「さっきお風呂入れておいたよ」


 一緒に入ろっか、と耳元で囁かれて、ジンワリと頬に熱が溜まる。ジッと目を見つめれば、背中をいやらしい手つきで撫でられていた。


 こちらが断らないことを踏んでいるからこそ、煽るように体を弄ってくるのだ。

 




 明るいところで裸を見られると、どうしてこんなに恥ずかしいのだろうか。


 昨夜はあんなに大胆な体制で恥ずかしいところも全て見られたと言うのに、どうにかして隠そうとしてしまう。


 生まれて初めて、あんなに心地よい感覚にさせられた。

 気持ちよくて、自分の体がどうにかなってしまうのではと不安になってしまうほど、強い快感を与えられ続けたのだ。


 湯船に浸かりながらじわじわと恥ずかしくなっていれば、太ももの裏側に赤い斑点が付いていることに気づく。


 こんなところに顔を埋められたのかと、昨夜の情事を思い出して更に顔を赤らめてしまっていた。


 「……めちゃくちゃ可愛かった」

 「律ばっかりずるい…私だって可愛い律が見たいのに」


 恨めしく言えば、慰めるようにキスをされる。最近は焦らす事なく、すぐに舌を絡め合うキスをするようになっていた。


 触れるだけでは物足りず、お互いが熱を感じたいと欲を出してしまうのだろう。


 深いキスはとても気持ち良いけれど、気づけばキスまでも蘭子がリードされてばかりいるのだ。


 「……律、舌動かさないで」

 「ディープキス出来ないじゃん」

 「私が律をリードするから」


 蘭子に出来るはずがないと思っているのか、おかしそうに笑っている。ギュッと目を瞑ってから、無防備に唇を差し出してきた。


 「どうぞ?」


 ピンク色の唇にそっと自身のものを押し当てて、あえてリップ音が鳴るように唇を重ねていた。


 そっと口を開けば、蘭子の動きにあわせて律も唇を開いてくれる。

 薄く開いた入り口に自身の舌を差し込めば、ちょこんと彼女の舌の先端と触れ合う。


 柔らかい感触に堪らなく興奮して、見様見真似で彼女の舌と絡め合っていた。


 先端同士をくっつけあってから、律の舌の裏側に自分の舌の表面を擦り合わせて。


 「……んっ、んァッ…」


 好きな人とする深いキスはとても気持ち良いけれど、やはり喘いでいるのは蘭子の方だった。


 どうしたら律を喘がせられるのかと、キスをしながら考えていれば、突然後頭部に手を回される。


 「ん、っ!?んぅッ」


 お子様なキスでは物足りないと言わんばかりに、激しい舌付きで口内を蹂躙され始める。

 ピタリと唇同士をくっ付け合って、奥深くまで舌を挿入されながら口内を掻き乱されていた。


 敏感な裏側をいやらしく絡められて、頬から唾液を伝させながら喘いでしまう。


 おまけにもう片方の手でキスマークのついた太ももの内側を撫でられれば、堪らない快感が体に走るのだ。


 「……ッ律」


 息を乱しながら名前を呼べば、チュッと音をさせてから口が離れていく。

 余裕のある表情で、息を乱したこちらを見つめてくるのだ。


 「どうしたの?」

 「その…」


 無意識に太ももを擦り合わせれば、察しの良い律は全て気付いてしまったらしい。

 背中に腕を回されて、人差し指でもどかしい触れ方をしてくるのだ。


 「これだけでシたくなったの?」


 これで否定をしてしまうほど、蘭子は我慢強い女ではなかった。本当は昨夜の熱がまだ冷めきっておらず、更なる快感を与えられたいと欲望を孕んでしまっている。


 我慢できなくて、そっと律の手を取る。

 ギュッと恋人繋ぎにすれば、それを肯定と受け取ったようで、背中に這わされていた手つきがこちらを煽るようなものに変わった。


 蘭子が恋人を心地良くするのはまだまだ先の話になりそうだと思いながら、想い人の指先にすっかり翻弄されてしまっていた。

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