第40話

 

 フォークで器用にパスタ麺を絡め取る、彼女の手つきをジッと眺めていた。蘭子と同じように、彼女も爪を短く切り揃えている。


 長期休み中は、リリ奈のようにジェルネイルを施す生徒も多いのだ。蘭子だって、彼女と付き合う前までは長期休みのたびに爪をオシャレに飾っていた。


 「……ッ」


 リリ奈の付き人である杏は料理が上手く、作ってくれたパスタも酷く美味しいというのにあまり味がしない。 


 間違いなく緊張してしまっていて、先程から料理を味わう余裕がないのだ。

 もしかしたら発展してしまうのではないかと、淡い期待をしてしまっている。


 料理を食べ終えて、太陽に長い間浴びていた2人は眠たげに欠伸をしていた。


 「もう夜遅いし、そろそろ部屋に行こうかしら」


 海から上がった際にそれぞれの部屋でシャワーは済ませているため、寝ようと思えばこのまま夢の世界に羽ばたけてしまうのだ。


 「そうだね…私も眠くなってきちゃった」

 「蘭子たちは好きにしてて良いから」


 ふらふらとした足取りで部屋へ戻るひなと、欠伸を必死に噛み殺しているリリ奈。


 メインルームで2人きりの状態に、余計に胸を速く鳴らしてしまっていた。

 ゴクンとパスタを飲み込んでから、震える声で律の名前を呼ぶ。


 「……わ、私たちはどうする…?」


 視線を下げながら尋ねれば、ギュッと手を取られていた。鼓膜を震わせる声は相変わらず熱を宿していて、緊張からキュッと下唇を噛み締める。


 「蘭子の部屋行こう」


 割り振られた部屋は横一列に並んでいて、角部屋は蘭子だった。その隣が律の部屋なため、リリ奈やひなの部屋からは一つ分空くことになる。


 音漏れを気にしているのだろうかと、様々なことを結びつけて勘繰ってしまう。やはり律は、今晩一線を超えるつもりなのだろうか。

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