第七話 新任教師の実力

 やっとまともな戦闘が来るぞ。

 なので連続投稿です

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 何をしてるんだ、こいつは?って視線だなぁ。

 あぁ、そうだろう。

 何せいきなり自分の頭を重たそうな黒い銃で撃ったんだからな。


 ただその一瞬の困惑、その間に戦場では数人は死ぬぞ?


「こっちだ」

 頭が吹き飛んだ筈のユウキが背後に現れ、驚く間もなく二人が右手の木刀による一撃で気絶する。

 残り八人。


「は?瞬間移動!?」

「チッ、全員背後を警戒!奴の銃は空間魔法が付与された聖遺物アーティファクトだ!」

 聖遺物、アーティファクト。

 異世界の宝物であり、まれに戦闘に役立つ武具ともなりえる物。

 神の力で創られていると言われ、売れば大金が手に入り、武器なら使いこなせば向かうところ敵無しとされている。


「半分は正解だ、『再現リバイバル閃光弾フラッシュバン』」

 生徒達に向けて引き金を引くと目が眩む程の強力な光が発生、既にユウキは自分の眼球に闇魔法で膜を張り、閃光を防いでいた。


 この銃、『再現剛銃リバイヴマグナム』の真の能力は『使用者の魔力、想像力に応じた現象の再現』。

 空間魔法が使えるだけの代物ではない。


「さて、まずは選別するか『殺意は軽く、速くトリガー・ハッピー』、『再現リバイバル転移弾テレポバレット二の矢チェンジ暗重弾ヘビィネロバレット』」

 そしてこの聖遺物には三種の形態がある。

 先程までが通常形態、普通に撃つだけ。

 今の形態が簡単に言うと速射形態、威力が激減する代わりに弾速と弾数が五倍・・に跳ね上がる。

 空間魔法が付与された弾丸は生徒の武器へ向けて飛び、命中すると同時にユウキの足元へとそれらが転移した。


(直接当てると万が一があるからなぁ……流石に殺すのは問題行動だ)

 空間転移は正確性が命、速射形態は威力が下がっているため、人間一人を確実に転移させられる威力の保障はない。

 危ない橋は渡らない方がいい。


 そして初弾が終わり、銃口からカチンと金属音が響くと次に放たれたのは黒の弾丸の嵐。

 これはシンプルな効力、命中すると何か鈍器で殴られたような衝撃が発生する。

 あまり当てすぎるとこれでも死に至る可能性があるがそこは問題なし、適当に撃っているのではなくちゃんと狙っているから。

 不用意に動けば無駄に当たる……が、そもそもまだ異世界に行く前の未熟者の中に銃弾を避けれる速度を出せる者は殆どいない。


 これは選別だ、これで倒れなかった者が遠い未来、一番街の住人になる見込みがあるとユウキは考えていた。


「……さて、大分減ったなぁ」

 目の前に両足で意識を保って立っているのは二人、その他にも執念で立っている者が一人いるがそれは間もなく倒れるだろう。


「やぁ、レベル100なんて雑魚だと罵った連中は全員倒れたか?無様なこった」

「……本当に100なのか?」

「身分証が嘘をついてないならな」

 俺は身分証のコピーを二人の目の前の地面へと滑り込ませる。

 身分証は天国において数少ない個人を判別できる公的文書、天国で作られた物を改竄することは出来ない。


 それを拾った生徒達は目を見張る。


「……レベル100なのに一番街?」

「俺シャルロッテ様とカレン先生しか見たこと無いぜ?一番街住み」

 へぇ、カレンも一番街なのか、少し評価を見直そう。

 ただの狂信者じゃなかったか。


「ありがとうございます、それと……倒れた仲間の代わりに謝罪させていただきます」

「慣れてるから別に良い、シャルロッテの威を借るだけの雑魚とか言われたこともあるしなぁ」

 事実だ。

 そして言ったのは何処ぞのワンコ株主君だ。

 その後『老害どもの威を借っても勝てない雑魚』と返しておいた。無論、ボコしたあとで。


「ですが」

 おっと、不穏だ。


「僕達も『レベル100に負けた』となればダークヒーロー課の名折れ、いくら貴方が強者であろうとそれは変わらない」

「なんだ、めんどくさいなぁ?今からでもシャルに代わってもらうか?その方が負けても言い訳になるだろ」

「それでは今現在までに倒れた仲間の意志が無駄になってしまう、正義の名の元に結束する貴方達とは別に、僕達にも成すべき事がある」

 ホントめんどくさい。

 めんどくさいから……


「終わりにしよう『殺意は重デスショット・く、確実にベヒモス』」

「正義の是非を神に問われて堕ちた貴方達には僕達は決して負けない!!」

 ……あ?


「『強欲の爪グリード』!!」

「っ!」

 トドメを刺そうと第三の形態に移行するも俺の手から銃が弾かれた。

 対象の持ち物を奪う系の能力…か?

 恐らくは俺、または再現剛銃の宿す魔力量が多過ぎて不完全な発動になったのだろう。


「くっ……馬鹿げた魔力量めっ!だが……俺達三人・・の勝ちだ!」

「三人……あぁ、なるほど」

 自身の魔力を散布、背後に極限まで気配をった者が一人、暗殺者系の職業だと想定。

 正面の二人は重戦士と先程の盗み系?と考えられる固有魔法を持ったこの場のリーダー的存在。


 ここで俺の固有魔法を使っても良いが……。

 一つ、こいつらに教える必要があるようだ。


再現リバイバルって言ったよなぁ、俺」

 空いた左手で黒の魔力弾を生成、背後と前方にそれらを放った。


「くっ!」

「はぁ!?」

「っ!!」

 三者三様の反応をしていたが全員何とか回避していた。


「リバイバルってのは再現って意味だ、つまりは何かを再現している……俺が使える魔法?うん、確かに空間魔法は大得意、だから銃無しでも同じ事が出来る。だけど完璧な正解じゃない、俺は閃光弾フラッシュバンになるほどの強い光魔法を使えないからな」

「……まさか、いや、そんな聖遺物あるわけが!!」

 あるんだなぁ、これが。


「銃の再現範囲は使用者が見たことがある魔法だ。たとえ俺の知らない魔法をお前達が使ったとしても、俺が理解できたなら、そっくりそのまま返してやる」

 空間魔法を利用して地面に落ちた銃を手元へと落とす。

 見込みがあるなら絶望的な差を突きつける、これを乗り越えてこそ、お前達は更なる成長を成せる。


 まぁせいぜい頑張ることだ、遥か上から目線で期待してるよ。




 ◇◇◇




 なんだ、なんなんだこの教師は!?


 別に僕は現時点で最強だとは思わない、レベルも暫定だが500相当までにはなれるとは言われたが。


 正義の偽善者を育て上げる『正義の味方課』の教師にはウンザリしていた。

 これもただの見せしめだと『ダークヒーロー課』の教師から言われた。

 簡単な仕事の筈だったんだ。


「は、動きが鈍ってるぞ。そんな事で成すべき事なんて成せるか?」

「なんで…当たらねぇんだ!?」

 目の前にいるのは暫定、ではなく確実にレベル100の男。

 転生前の、転生したらまた1からになってしまう暫定レベルに過ぎないが俺達三人は全員レベル500付近。

 だが何故か勝てるビジョンが一切見えない。


 最初は武器、銃型の聖遺物のせいかと思ったが何を考えているのか召喚したそれを今では腰に収めて戦っている。

 まるで差を見せつけるかのように、言い訳が出来ないように、『お前達はこの程度の存在だ』と言うように。

 奴自身が使える魔法と銃だけで使える魔法の区別も付かないのがこれまた厄介。

 閃光弾が本当に自力で使えないのか?というブラフも警戒しなければならない。

 不用意に空いた手に近づいて眼を潰されれば即座にトドメが来てしまう。


 そのまま戦い続けること10分

 俺達ダークヒーロー課の精鋭10人は敗北を認めた。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る