娘のパンティー
語理夢中
娘のパンティー
今年45歳を迎えた。
ハウスメーカーの営業畑一筋で頑張って来た。
家事一切を妻に任せ、土日も無く働き詰めで今日まで来た。
そしてやっと部長代理の席を掴んだ。部下たちに現場を任せ、自分の時間もこうして持てるようになった。
洗濯物が夕方の涼しい風に吹かれる自宅のベランダ、西日が眩しい。任せきりだった家事もこれからは手伝える。
大きくは無いし、郊外だが一戸建てを建てた。人に言ったことは無いが自慢の家だ。
室内に洗濯物を取り込む、慣れない作業に手間取るが丁寧に畳んで行く。
こんなに時間を掛けていては妻に馬鹿にされてしまうなと頬が緩む。
毎日の妻の苦労を思いながら洗濯物を畳んで行く。
妻の無地の白いTシャツ。子供の体操着。自分の靴下。真っ赤なレースの下着。
「かあさーん!ちょっときてくれるかなぁ~」
「なんですか?お父さん」
「これは誰の下着?」
私は真っ赤なレースの下着を恐る恐る手に取って見せる。
「あぁ、マキのよ」
素っ気なく答えると行ってしまった。
マキがこんな派手な下着を、、、
オムツをぱんぱんにしながらよちよち歩いていたマキ。
さくらんぼの可愛いパンツを履いていたマキ。
あのマキがこんな赤いレールの下着を、、、
夕日みたいに赤い下着が目に染みて、頬を熱いものが伝い落ちる。
「ほぅっ、まぎぃ~」
思わず赤い下着で顔を覆う。私の心を逆なでるようにレースがチクチクと頬を刺す。
私は不安と焦りと寂しさを持って改めて赤い生地を広げると、なぜか股の部分の生地が開き、その場でひっくり返る。
「ほっあっ、まぁぎぃ~」
私以外の男が、、、そう思うと居ても立ってもいらずに思わず自室に行き筆記用具を漁った。
パンティーの前に戻ると私は涙を飲み、赤いパンティーのラベルにマッキーで太くマキと十数年振りに娘の持ち物に名前を書き、零れた涙と共にそっと畳んだ。
私に家事と言う激務は務まらないかも知れない。
私は虚空を見つめ、現実の無常から一時逃避し、馬鹿な謎かけなんぞを考えてみる。
沈み行く太陽と掛けて、娘のパンティーと解きます。
その心は、
どちらも気が付けば赤かった。
馬鹿馬鹿しさに、鼻で笑うと私は明日から仕事が忙しくなるだろうと思った。
娘のパンティー 語理夢中 @gorimucyuu
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