第2話
校舎の屋上まで届く大きなトウカエデの木が、黄色く染まる
ヒヨドリの声がこだまするように鳴いていた
放課後
職員室からの帰り道
音楽室からピアノの音が聞こえて来た
このクラシック音楽…知ってる
いや、正確に言うと知っているというよりは聞いたことがある、と言うレベルだ
私はクラシック音楽の知識は殆どないし
音楽の成績はまるでダメだから
教室に向かおうとしていた踵を返して、好奇心とその音に惹かれるように音楽室に歩みを進めた
誰が弾いてるんだろう?
先生かな…?
どんどん
近づくほど大きくはっきり聞こえて来る音
音楽室の前
二重扉になっているそこは、一つ目の扉が全開だった
私は一歩、教室に入る
音楽室の小窓からをそっと中を覗いた
…取り敢えず、曲が途切れたら教室に入ってみよう
扉に背を向け、じっと息をひそめながら
耳を研ぎ澄ませてその曲に聞き入った
この聞いたことあるメロディー、何てタイトルなのか聞きたい
テレビドラマや、歯医者でも何となく聞いたことあるような気がするんだよなあ…
それくらい、この音楽は日常の一部に溶け込んでいる
なのに、私はタイトルを今まで知らなかった
と言うか、聞いたことがあるけどタイトルを気にした事がなかった
けど…
生演奏で耳にした今
この曲がさらに身近な曲に変わって…
何て曲なのか知りたくなった
軽く跳ねるようなピアノの音から始まるこの曲は
ある一定のリズムで規則的に音が流れていく
その音は
どんどん低く、強くなっていく
でも一定のリズムで規則的に流れる音は、単調なメロディーを繰り返しているだけのように聞こえるけど
音が軽くなったり、重くなったりと
音に強弱があり、動きがある
不思議な魅力のある曲…
そんな事を思案していたら、いつの間にか音楽室の扉を開けて一歩足を踏み出していた
気付けばピアノの音は止まっていた
え
「…なんだ、先生かと思った」
目の前には、すっと背の高い男子生徒がそう言ってこちらを見ていた
音楽の先生じゃない…
その人は髪をセンターで分けて、前髪は眉毛辺りで切り揃えている
あれ…?
何だか親近感がわく存在と言うか…何となく見覚えがあるような…
でも初めて見た気がするし、同じクラスではない
何だろう…
この胸に引っかかる感じ
「何か忘れ物…?」
フランクに私に話しかけながら、彼はグランドピアノの方に向かっていった
「あ…
その
曲が…」
音楽の先生だと思っていた人物が、予想外で
ドギマギしてしまって、言葉が詰まった
「え…?」
「あー…あの、その曲が
なんて曲なのか、気になって…」
動揺しながら搾り出した言葉
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