第6話――ひとりぼっち
…どうしよう。
先生を傷つけたくない。
直感で、そう思った。
でも、どうすることもできない。
ひとまずは。
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「…」
鍵を取り出し、家の中に入って、自室へ向かう。
「おい、ここ座れよ」
母が私にそう言いつける。
私は、リビングの母の前に正座した。
「お前、昨日どこいってたの?誰と一緒だったの?帰ってこなかったよね、連絡もよこさずに」
「…」
「何?なんかいって」
「…」
「理由を話せって言ってるんだよ!!」
平手が飛んできた。
よけられずに直撃する。
「あ?なんか言えよ!!」
繰り返し殴られる。
顔に血が飛び散っているのがわかる。
耳鳴りがひどい。
鼻が曲がりそうに痛い。
いつものこととはいえ、かなりこたえる。
「ほら、もうやめなさいよ」
「うるせぇ!」
父が止めに入っても、無駄だ。
というのも、この家に自分の味方はいない、ってわかっているから。
父が偽善者ぶるたびに、寒気がする。
辛い。誰か助けて!
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朝。重い足取りで正門をくぐる。
家、塾。
どちらにもストレスがあって、正直疲れる。
逃げ場と言ったら、学校くらいだ。
ふと前を見ると、美咲と
「いや〜、昨日全然寝てないんだよね」
「そうなの?何時間くらい?」
「え〜、3時間とか」
「え!?それで起きていられるとか、すごいよ!勉強してたの?」
「まさか。ゲームだよ」
「あ、◯神でしょ」
「あたり」
「やっぱりね〜」
いいなあ。
蓮くんは、美咲の片思いの人。
今年始めて同じクラスになって、美咲が頑張ってアタックしている相手。
二人はかなり仲良くおしゃべりしていて、クラスでは割と噂になっている。
来週には二人でカラオケに行くらしい。
女子力の高い美咲らしいな、と思う。
親友が全力で恋をしている姿を見るのは清々しいし、とてもうれしい。
でも、どこか置いていかれるような気持ちにもなる。
「あ、繭!おはよ〜」
「うん、おはよ」
後ろをくるっと振り返った美咲が挨拶する。
ピンクがかったキレイな茶色のポニーテールが爽やかで、とても健全に見える。
そんな姿を見ていて、父・母との不和、あなたに関わるかもしれない秘密は決して美咲には言えないような気がした。
別に隠し事をする気でいるのではない。
なんとなく、眩しすぎる光の前で、私が汚くなったような気がするから。
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