なりそこないの現神姫のお世話係

菜の

序章

小さい子供の頃の話しだ

その日は村中の人が大きいお屋敷に集まっていた。

着慣れない着物を着せられそれを窮屈に感じながらも両親に従って長い列に並んでいた。

でも当時の私はずっとその列に並んでいられるほど集中力とかがなく、両親がほかの大人と話している隙にそっとその列から抜け着崩れなど気にもせず走り出した。

村で1番大きな御屋敷には桜も咲いており花吹雪が舞っていた。

桜色の景色の中、落ちている枝を拾い上げ振り回して散策している中でふと、視界に赤い色が写った。

恐怖心などは訪れず好奇心そのままに桜の木のそばにある赤に近づいてみる。

それは人だった。

私と同じ年頃だと思われる赤い着物を着た子が転がっていた。

どうすれば分からなくてしばらく立ち止まって眺めていた。

きょろきょろと当たりを見渡すが他に人はいない。


「ねぇ、寝てるの?」


声をかけてみるが反応は返ってこない。

よくよく見るととても綺麗な顔立ちをしてるのが分かり気分が上がる。

この子とお話してみたいーーー。


「ーーーねぇ、起きて」


風が吹いた。

桜の木を揺らし花弁が舞う。

とっさに目を閉じて風がおさまるのを待ちながらそっと目を開けると印象的な赤が飛び込んできた。

寝ていたと思われる赤い着物の子が目を開けてじっと私を、その赤い目で見ていた。

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