第25話

ルーカス視点25

「アリシア・ツェローラ!君には失望したよ。婚約破棄させてもらう!!!」


まさかとは思ったが、やはりというかなんと言うか、本当にこの瞬間がやってきた。


ルーカスは頬が緩みそうになるのを必死に耐えていた。今まで生まれてこの方伊達に当たり障りのない笑顔を貼り付け続けていた訳ではないのだ。


今日はアリシア達の卒業パーティー。

オリバーとメアリーが街で話していた内容が現実に起こっていた。


あの話を耳にしたあと、ルーカスは直ぐにアリシアとローザに知らせた。相変わらずアリシアはオリバーも流石にそこまでの馬鹿ではないだろうと話半分に聞いていたようであったが、ローザは違った。

直ぐに新たな映像器具を用意し、卒業パーティーに持ち込めるように手配したのだ。


現に今、その映像器具は彼女の手の中にある。

オリバーがメアリーを引き連れてアリシアの正面に立った瞬間に彼女はそれを起動させていた。


本来ならば他の証拠類と同じくルーカスが起動した方が信憑性は上がる。しかし今、ルーカスは王族用の貴賓席に居る上、大勢が目にしている事態を記録しているのだ、そこまでの差は生まれないだろう。


あれこれルーカスが考えている間にも、彼らは淡々としたアリシアに着々と論破され続けている。

正論を返されて喚き散らす姿はそれはそれは惨めに見える。


それはそうと、今日ここで事件を起こすとは信じていなかったはずなのにも関わらず、アリシアの落ち着いたその姿は流石だなとしみじみ思う。


淡々と、淡々と。

ただ、事実だけを、真実だけを。

ただの1度も感情を荒げずに。


そんなアリシアの様子が帰って二人の滑稽さを際立たせる。

周りの様子を見るに、きっとこれが通常運転なのだろう。

彼女達に集まった視線がそれを物語っているようだ。


街で彼らを見た時も思ったのだが、どうやら主導権を持っているのはメアリーのようだ。

オリバーを褒めそやして良い気にさせ、上手く自分の望むように動かしている。


これがこちらの思うように動いてくれるのならばこれ以上に欲しい人材はないと思えるほどの技量だ。

しかし、敵対するなら話は別。

徹底的に潰すのみだ。


――勿体ない――


そんな彼らの様子にルーカスは小さく嘆息したのだった。

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