第23話
ルーカス視点23
そこからは驚く程順調にことが進んだ。
あの二人は自分たちがしている事の重大さが分かっているのだろうか?いや、きっと分かっていないのだろう。
オリバーとメアリーの密会も(密という程忍んではいなかったが)、アリシアに謂れのない罪を着せようとする瞬間も十分過ぎるほど手に入ってしまった。
あとはこれらをどうするかだ。
アリシアは自分の身を守る為程度にしか考えていないようだが、ルーカスとしてはなるだけ事を大きくして婚約を破棄させ、そのまま奪い取ってしまいたい。
王宮であれこれ考えても仕方がないと、視察と称してロキを連れて抜け出した。
城下町の喧騒がどこか新鮮に感じられる。
今日の天気も相まって解放されたような、清々しい気分だ。
爽快な空気に身を任せ、街を歩いていると、見知った影が店に入っていくのが見えた。
もうすぐお昼時だ、昼食を摂るのだろう。
ルーカスは衝動的に彼らの後を追って店に入った。
案内された席は丁度彼らの真後ろ。
会話が聞こえる丁度良い位置取りだ。
席が遠かったら盗聴器でも仕掛けようかと思っていたからこの場所はありがたい。
料理が運ばれてきてからも暫くは恋人同士として差し支えないような話の内容だった。
しかし、話に一区切りついた辺りで空気の流れが変わる。
どうやら、侯爵子息は男爵令嬢の『アリシア様にいじめられている』を真に受けているらしい。
ただただ、馬鹿らしい。
そう鼻で笑い飛ばしてしまいそうだったが、話を聞くに、どうやら男爵令嬢はオリバーを奪ってしまえば自分が未来の公爵夫人になれると勘違いしているようだ。
何故そんな勘違いが出来るだろう?
そもそもツェローラ公爵家はアリシアの実家だ。
オリバーはあくまでも入婿でありマーシャル侯爵家の次男。
アリシアと結婚出来なければ行き場が無いのだ。
結婚したとしても彼の将来の役職は公爵ではなく、あくまで『公爵補佐』。
アリシアと縁もゆかりも無い男爵令嬢がオリバーと結婚した所で二人揃って行き場が無くなるだけなのに。
………………考えても無駄だ。
多分、分かっていないだけなのだろうから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます