第22話

ルーカス視点22

「私の実家では、魔道具を扱っております。それで、監視用に校内の何ヶ所かに記録用の映像器具を仕掛けておいたら良いのではないかと思ってアリシア様に先日進言させて頂きました。いかがでしょう?」


最初に口火を切ったのはローザだった。

先程の彼女の話から考えると、その時にはアリシアにそこまでは必要ないのではないかと断られたに違いない。その時はひきさがったのだろうが、きっと納得していなかったに違いない。

だからこそ、ルーカスが味方に着いてくれると分かった今、もういちどその話を蒸し返してみることにしたのだろう。


そして、その判断は正しかった。

今、アリシアにはルーカスの調査に協力すると言ってしまった現実がある。映像記録を残せるなら、ルーカスは、アリシア自身が口で伝えるよりもずっと正確な調査が出来るだろう。

彼女の中に断るという選択肢は、既に消えてしまっていたのだ。



「それが一番良いような気がしますわ。……もしよろしければ、ルーカス様が映像器具を起動して頂けないでしょうか?きっと私たちがするよりもずっと信憑性のある強力な証拠となり得るでしょう。」


アリシアの前向きな返答にローザは一瞬目を丸くしたが、彼女の気が変わらないうちに急いで話を進めてしまう事に決めたようだ。



「ご存知かもしれませんが、私の実家は魔道具を多く取り扱っております。商品を提供させて頂きますのでお使いください。」

「……いいえ、対価はきちんと払うわ。そこまで貴女にさせる訳にはいかないもの。気持ちだけ頂くわね。」

「いえ、ですが……。」

「あぁ、アリシアの言う通りだ。それに、ちょっと今回は別件でもその記録を見させて頂きたい。だから、その気持ちは嬉しいが、きちんとお金は払わせて貰いたいんだ。」

「…………分かりました……。おふたりがそう仰るなら。でも、大量に購入して下さるのは大変助かります。ですから気持ち程度のお値下げはさせて頂きますね。……これくらいはお許しください。」


ローザをちょっとがっかりさせてしまったようだが、タダで提供させたとなると後々収賄及び贈賄として問題になっては困る。これから色々な事を計画しているのに、こちらに弱みが出来てしまってはこまふのだ。


だが、ローザも友人とそのいとこからお金を取るのは気が引けるのだろう。まして、発案者は自分だ。これでは宣伝行為と思われてしまっても仕方がない。だがまぁ、割引程度なら許されるだろう。



「ありがとうございます。ローザさん。ありがたく受け取らせていただきますわ。」


ローザはアリシアの言葉に、それはそれはほっとしたような表情で微笑んでいたのだった。

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