第20話

ルーカス視点20

馬車を降りると、そこは公爵家の正門であった。

これまでの経緯からもっと秘密裏に動くのかと思っていたが、アリシアはあえて堂々とすることにしたらしい。あくまでもいとこと仲の良い友人を家に招いただけ。たしかにあの公爵夫妻は騙せそうにないな……と、ルーカスは彼らの顔を思い浮かべながら遠い目をした。


屋敷の中に入ると、待ち構えていた公爵家の使用人達にアリシアの部屋まで案内される。アリシアからの手紙に書いてあった時間ぴったりに来たつもりだったのだが、どうやら、もう一人の客人は先に訪れているようだ。ルーカスを待たせないようにという彼女らの配慮だろうか。


案内された先は、ずっと昔に何度も訪れた場所だった。流石に内装は少し変わっているが、あの頃と近しいような雰囲気をした部屋だ。


中にはいると、アリシアとその友人が礼をとる。



「招いてくれてありがとう、アリシア。……それから……リヴァノフ伯爵令嬢、だったかな?」

「ローザ・リヴァノフと申します、殿下。覚えて頂けたこと、大変恐縮に存じます。」

「こちらこそ来てくださってありがとうございます、ルーカス様。こちらのテーブルでお話しましょう。」


ルーカスの挨拶に、まずは問い掛けられたローザが、次にアリシアが返事をした。

アリシアの案内に従って、三人とも移動する。


テーブルにはティーセットが用意されていた。

どうやら、使用人達が入ってくるのを防ぐために先に用意したようだ。温度が変わってしまわないように用意されているお茶は冷たいものだった。

今日の気温には丁度良いだろう。


アリシアに話した内容には国家機密に近いような内容もある。少なくとも、グレーな方法で調べたものも含まれているのだ。ローザには、流石に全てを話す訳にはいかないが、掻い摘んで状況を説明した。

彼女にも思うところはあったようで、渋い顔をして聞いている。


話が一段落着いたところでアリシアが部屋から出ていった。三人とも自分達が思っているよりも緊張していたようで、飲み物の減りが早かったのだ。


彼女が出ていくと、ローザは神妙な顔をしてルーカスを見つめた。



「……殿下。ここだけの話、最近の男爵令嬢の動きを見ていますと、まるでアリシア様を陥れんとするかのように思えます。」

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