第11話

勿論、本当に彼女をいじめて、その延長線上でドレスを汚すなどといった幼稚な事を仕出かした訳では無い。

しかし、アリシアが非を認めるのかと盛大な勘違いをしたメアリーは、得意気な顔をする。



「ええ、そうよ!なんだ、覚えてるんじゃない!」

「ええ。あれだけ目の前で派手に転ばれたら嫌でも記憶に残りますわ。」


はち切れんばかりの笑顔と共に答えるメアリーに、冷たい表情をしたままそう告げる。それに対して、メアリーは声を張り上げる。



「何よそれ!私が勝手に転んだみたいな言い方して!貴女があたしを転ばせたんでしょ!?」

「……実はここに、その日の映像記録がございます。」


喚くメアリーに静かに告げると、先程アリシアがアイコンタクトをしていた友人の1人が前に進み出る。



「こちらです。」


何故彼女が丁度記録を撮っていたのか。それはメアリー自身の行動が原因であった。アリシアを目の敵にして何かとあることないこと周りに触れ回っているメアリーの行動に先に堪忍袋の緒が切れたのはアリシア本人ではなく、その友人達だったのだ。

自分から動くと不利になると考え、友人達を宥めたアリシアは、彼女達を納得させる為に証拠集めを徹底する事にした。


丁度1ヶ月前のこの日。

それは学園主催のパーティーが開かれる日だったのだ。パーティーとは言っても、今日開かれている盛大なものではなく、学園で学んだ社交界での振る舞い方やマナーを実践する言わばテストのようなものだ。

だがそれでも、アリシアを貶めようとするメアリーが何も行動を起こさないとはとても思えなかった。

とはいえ、親しくもない彼女らがメアリーを監視するのは難しい。

そこで、その日のパーティーの少し前の時刻からアリシアを録画する事に決めたのだ。



「以前から、ポーラ男爵令嬢はツェローラ公爵令嬢の名誉を貶めるような事を吹聴しておりました。ですから心配になった私たちがツェローラ公爵令嬢にご迷惑をお掛けしてしまうことは承知しておりましたが、何か行事がある際は必ず録画させて頂く事を習慣付けるようにしたのです。」

「私の為に貴女達がしてくれたのだもの、迷惑だなんて思っていないわ。……ですが、私達だけでは証拠の捏造だと言われてしまうかも知れません。そこで、あるお方に助けて頂きました。」


アリシアが言い終わると、王族が座っている方から1人静かに歩み寄ってきた。

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