第9話

メアリーの声に会場中からギョッとしたような視線が集まる。皆一様に信じられないものを見たかのような様子だ。



「……わたしはそなたに発言を許可した覚えはない。」


地を這うような声だ。ただ周りから見物していただけの者達をも竦み上がらせる程の迫力がある。

だが、空気の読めないメアリーはそんな事は気にも止めない。



「そんなの酷いじゃないですか!さっきアリシアさんとは話してたのに!」


彼女のとんでも理論に周りは唖然とするばかりだ。

国王は早々に考える事を放棄し、彼の姪に任せることにした。



「そもそもアリシアにはわたしから声を掛けたのだから当然だろう。……アリシアや、時間を取らせて済まなかったな。話を戻してくれるか?」

「はい。かしこまりました、陛下。」


アリシアはオリバーとメアリーの方へ向き直る。

オリバーは信じられないとでも言いたげな表情でメアリーの方を見ていた。

腐っても彼は高位貴族の子息だ。

彼女がどれほどとんでもないことを仕出かしているのか彼は理解しているのだ。

この場で唯一それを理解していないメアリーは、憎々しげにアリシアを睨み付けている。



「では話を戻しますね。いじめの件ですけれど。……そうね、まず、マーシャル侯爵令息。貴方、沢山の持ち物を貢いだと存じておりますが、具体的にいつ、何を貢いだか思い出せますか?」

「何よそれ!今関係ないじゃない!」

「ポーラ男爵令嬢。私は今貴女に話していません。……さぁ、マーシャル侯爵令息?」


アリシアの言葉を受け、オリバーは少し考えたあとぽつりぽつりと話し出す。



「……具体的に何月何日というような事は分かりません。……ですが、貴女なら分かるのでは?僕がメアリーに物をプレゼントしたのは、……貴女に持ち物を破壊されたと聞いたからです。」

「そうよ!あんたにそこにいる取り巻きたちと寄って集って攻撃されて。……怖かったんだからっ!!」


庇護欲をそそる様な仕草でオリバーにしなだれ掛かるメアリー。先程までなら鼻の下を伸ばしていたであろうが、メアリーの非常識さを目の当たりにした今、少し引き気味のオリバーである。

また、自分が劣勢だと漸く気が付いたのだろうか。

どことなく言葉使いも丁寧になったように感じられる。


とはいえ、それで許す様なアリシアでは無い。

彼女はさらに追い打ちをかけて行く。

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