二十日目:「入道雲」『友達だったんだ』
夏の夕方、入道雲がもくもくと立ち上がる。
俺の友人は入道雲のような奴だった。
性格ははっきりしているのにどこか掴み所がなく、捉えたと思うと消えてしまう。
そう、今はいなくなってしまった友人のことだ。
俺とあいつは確かに友人だったと思うのに、突如連絡が途絶えたのがわからない。
俺が勝手に友人だと思っていただけなのだろうか。
親切な友人だった。どこにいても目立つ奴だった。
困った人にちょっかいをかけては光の方に導く。理由は「友達だから」。
俺は正直あいつが何を考えているのかわからなかった。でも、一緒に過ごすうちに尊敬するようになった。
俺もあいつのようになりたいと、観察して真似をした。
けれど一向にうまくいかない。
観察して、観察して、観察して、それでもわからなかった。俺は「愛」を理解できなかった。
わからないままあいつは去ってしまった。
俺はあいつが好きだった。
あいつが今どうしているのかはわからない。
勇者のような奴だった。
だから俺もこうして異世界で勇者なんてやっているのかもしれない。
今もやっぱり「愛」はわからない。愛想のない俺の元には誰も来ないから、一人で魔王を探して倒して、
ローブを脱いだ魔王はあいつそっくりの顔をしていた。
親しい相手の顔をして人を惑わす、魔族とはそういうものだ。
だから。
剣で貫かれて消える刹那、魔王は笑った気がする。
真意なんてわからない。魔王は死んでしまったから。
元の世界に戻った俺はカーテンを閉め、通じなくなった連絡先を見ては眠る。
外になんて出ない方がよかったんだ。
神はどうして俺を選んでしまったのか。
何もわからないから眠るだけ。
それでも俺たちは友達だったんだ。
そう、思った。
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