七日目:「天の川」『天気は雨』

 いつもいつも、叶わぬ願いばかりかけている。

 行きつけのスーパー。この時期になると、短冊と笹が飾られる。

 「ご自由にお書きください」と書かれた紙を見ながら、今年も叶いそうにない願いを書く。

 この日の空が晴れだろうが雨だろうが、俺の願いは叶わない。

 一度死んだものが蘇るなど摂理に反しているし、不可能だからだ。

 失ったものが多すぎて、振り返ることすらできない。その大きさで心が痛むから。

 

 古傷が疼く。この時期はいつも、調子が悪い。

 「平穏に暮らせますように」「病気が治りますように」

 ますます叶わない。

 あの頃と比べて世界はハードモードになり、富める者と貧する者の差が広がり続けている。

 当時の俺はまだ何も知らなくて、好奇心の赴くまま行動範囲を広げていた。

 短冊に書く願いも、ゲームが欲しいなどというかわいいもの。

 長じるほどに、抱く願いは不可能になった。

 

 忘れられずに苦しんだだけ解放が遅くなる、なんて言われても、俺もずっと囚われたまま■■年過ごしてきたのだから今更だ。

 短冊に書くよりもいっそ、寺かどこかに行った方がいいのかもしれないとも思う。

 踏ん切りがつかないままずるずると過ごして、こんなに時が経ってしまった。

 安息はどこですか。

 平穏はどこですか。

 聞いたって答えは返ってこない。

 

 馬鹿なことをしている、と思いながら今年も短冊を吊るす。

 今日が終わった後の短冊の行方はわからない。

 どこかで燃えていればいいが。

 

 そんなことを考えた。

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