新宿アイ・ドール
石花うめ
第1話 AIアイドル・帆夏ちゃん
新宿の路上では、AIロボットのアイドルがライブをするようになった。
オレンジ色の長い髪を軽やかになびかせ、集まった観衆に元気いっぱいの投げキッスをばらまく女の子——彼女は、AIアイドルとしてソロで活動している
帆夏ちゃんの見た目は、人間と比べても遜色無い。
世の男性、さらには女性にまで好かれるであろう、整った美しい顔をしている。現に私は女性だが、帆夏ちゃんの顔が好きで、帆夏ちゃんを意識したメイクをしている。
もちろん顔だけではない。帆夏ちゃんは歌もダンスもとても上手で、ファンサービスも超一流なのだ。
AIロボットというと、カクカクした動きをイメージするかもしれないが、全くそんなことはない。動きはとてもなめらかで、むしろ、一度覚えたダンスはミス無く完璧に踊れるというAIの利点を生かしている。
「今日も来てくれてありがとー! みんな愛してるよー!」
曲が終わり、最後のMCを終えた帆夏ちゃんは、集まった十数人のお客さん一人ひとりにハイタッチをし始めた。これは帆夏ちゃんの路上ライブの恒例行事だ。
私はハイタッチをするときに、ボディのメンテナンス代かつ感謝の気持ちとして千円札を渡す。
帆夏ちゃんはいつも「私のことを見てくれてるだけで嬉しいのにー!」と、人間には真似できない屈託の無さすぎる笑顔で言いながら、申し訳なさそうに千円札を受け取る。そして最後まで私たちファンのことを見ながら、元気に手を振って帰っていく。
帆夏ちゃんのおかげで、私は毎日楽しく生きられているのだ。
しかし、一ヶ月前の私は、自分が路上ライブにハマるなんて想像すらしていなかった。
帆夏ちゃんを初めて見た時のことは、今でも鮮明に覚えている。
あれは、真冬日の仕事帰りのことだった。
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