スケーターズ・スペース

小泉藍

氷族館分類目録

男子シングル選手(1)~環、哲~

小春川環こばるかわたまき(日本)

SHの主人公。作中年齢は大学1年→2年(休学)。SOEでも登場し、高2から高3までの姿が描かれる。

身長172センチ。

「氷上のエトワール」の異名を持ち、シニア男子シングルで唯一のビールマンスピンの使い手であることから「ミスター・ビールマン」とも呼ばれる。

大学入学時に知り合った南雲小夜子と恋人同士。

〇四年度から〇六年度までの男子シングル全日本チャンピオン。〇六年度インターハイ優勝。

国際的にも世界選手権十位、トリノ五輪七位という順調な成績を残すが年下の天才・高槇哲の台頭に押され、〇六年度全日本は哲の途中棄権により優勝するもその後出場した世界選手権で遭遇したレオ・ウィリスの言葉に動揺しショート落ちの惨敗を喫する。

自分を鍛えなおすためにアメリカにわたり、リアム・ブリュネとの出会いによりスケーティングと表現力を向上させ復活を果たす。

色白童顔で黒目がちの大きな目という端麗な外見とすらりとした体形。もとはバレエをしていたが九歳の時に見たアイスショーに感動し、フィギュアスケートに転向する。

スピンの巧さと新採点への対応力の高さにより好成績をおさめるも四回転が跳べないため世界のトップには食い込めず、またスケーティングの拙劣さによりスピードとリンクカバーにも欠ける。

表現も一見綺麗にまとめているが非常に表層的。

それらの欠点をリアムに陰でも面と向かっても逐一指摘されるが、反面バレエの才能は真正のもので、当のリアムに「混沌と舞踊を司る神デュオニソスの化身」と評される。

特にコンテンポラリーダンスではフィギュアスケートの演技とは打って変わった爆発的な躍動感を現出するが、それは後述する自我のなさゆえであり、ダンサーとしての天才性の表れである。

性格は優しく素直で不利な状況でも試合に臨む責任感、暴漢と判断した相手に立ち向かおうとする勇気もあるが、一方で大人に言われたことしかしない、言われたことを延々と繰り返すという主体性のなさも見受けられる。

感受性には非常にむらがあり、誰もが感動する氷神バシキロフの演技に無反応。同じ練習リンクで滑った際も、通常は圧倒されるバシキロフのオーラを全く気にせずに滑っていた。

その反面高槇哲には彼が小学生のころから畏怖を覚え、中学生の哲が披露したシンプルなコンパルソリに感動して涙を流す。

レオ・ウィリスに対してもファンであり、スケート以外でもレオの客演したテレビドラマを観て深い感動を覚え、自身の演技の刺激となる。

学業は優秀で、バレエをやりこんでいるためバレエ演目の造詣もあるが、文化には基本的に無関心。

その反面、大学入学後に小夜子から紹介された若者向けの漫画や音楽を心から楽しんでいた。

手先は不器用で音感にも欠けるために小中高では体育以外の実技科目はすべて不得手。

創造性にも欠けるために創作ダンスの課題でも他の生徒が踊ったダンスのコピーしかできないが、その分視覚把握と身体再現には極めて長けている。

また曲の解釈に関しても、リアムの指導を受けてからは優れた感性を発揮するようになり、リアムを内心驚かせた。

〇八年度世界選手権で、哲とレオの演技に圧倒されて自信を喪失し、逃げようとするが小夜子の言葉で恐怖を乗り越えて出場し見事な演技を披露して四位入賞、真の再起を果たす。




高槇哲たかまきてつ(日本)

SOEとSHに登場。

SOEでは中3、SH本編では高1と高2の姿が、インⅠでは出生から12歳ごろまでの姿が描かれる。身長163センチ。

両親も祖父もスケート選手で特に父の義彦はワールド銅メダルをとり、本場のニューヨークで活動する現役のショースケーターというスケート一家に生まれ育つ。

スケートは2歳から祖父をコーチに習い始め、才能に加え元旦でも練習を休まない熱心さで中1で全日本ジュニアを優勝し三連覇、中2と中3で世界ジュニアを連覇とその実力は折り紙付きで、天才の名をほしいままにする。

高いジャンプ能力に加え表現力も非常に高く、重厚なクラシックもコミカルなテレビサントラも滑りきる。

さらに基礎のスケーティングも優れており、シンプルなコンパルソリで環を感動させ泣かせるほど。

メンタルも強気で傲慢ともとれる発言、常識では測れない誇大妄想的な言動を繰り返すが本人としては大真面目である。

とはいえ弱点もあり、「瞬発力がある分疲れがたまりやすい体質」のため連戦すると演技後半でスタミナ切れを起こしやすい。運動神経はアスリートとしては平均以下で、スポーツ強豪校に在籍しているため「普通のスポーツをしていれば部活のレギュラーにもなれない」と自分でも認めている。

また振付を覚えるのが遅め、フィギュアスケート選手ならだれもが習うダンスレッスンも苦手で、「音楽を聴いて自然に踊りだすという経験をしたことがない」ということを密かにコンプレックスにしていた。

しかし反面音楽家としての才能は非常にすぐれたものがあり、上記の弱点はむしろその反映であった。

環が「精神と身体と頭脳が一体になっているため振付を一度見ただけで覚えるのも得意」と評されるのに対し、哲は「感覚と身体が一体になっていない」と評されるが、それは音楽を感覚だけで完全に処理できるのでわざわざ身体で表現する必要がないため。

その能力は、他人のプログラム演技の楽曲を数度視聴しただけで完全に旋律を把握して覚えきりわずかな変更も聞き逃さない、なんとなく作った鼻歌が非常に個性的で、海外のプロミュージシャンの曲とコーチの津森に勘違いさせるなど超人的なもの。

高二のはじめにプロダンサーたちにその才能を認められ、ダンスではなく楽器を習うようにというアドバイスを受ける。

その言葉に従いピアノを習い始め、わずか半年でバイエルを終了しブルグミュラーに突入、それによって演技はさらに音楽性を増しGPFと全日本と四大陸で優勝。「氷上のマエストロ」の異名をとる。

初優勝を目指して挑んだ08年度世界選手権でレオと激突し、自身は史上初となるクワドループを成功させるが規定違反により点数上は無効になってしまう。

しかしその演技に触発されたレオがそれ以上の演技を披露し、哲は彼の演技の精神性の深さに打たれて自身の楽曲への取り組み方を反省するまでに至り、演技終了後のレオを心から称える。

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