8
君は、少年たちの願いを断る事にした。
「未成年の分際で何を考えてんだ、こういうのは大人になってからだろ」
と厳しい口調で少年達に言う。
すると、
「ひぃぃっ! すっすいませんでしたぁ!」
少年達はひどく怯え、
「皆、逃げろぉ!」
「捕まるぞぉ!」
叫びながら、少年達のひとりが何かを君に投げつけてきた。
それは爆竹であった。
――バンバンッ! バチバチ! バンバンバンッ!
火花を散らしながら激しい破裂音が、君の足元で起こる。
「わあぁぁ!?」
君が混乱する中、少年達により、さらに煙玉が放り込まれる。
真っ白な煙が君達を包みこんだ。
驚きで、君はカバンを投げ出してしまう。
カバンは少年達の方へ飛んでいった。
「なんだこれ?」
「カバンの中からエロ本が飛び出してきたぞ!」
「あいつのだ、もらっておこうぜ!」
と少年達が話すのが聞こえてきた。
君は煙幕にむせながら、足元の爆竹を避けながら、転げながら煙から脱出する。
痛くて開けない目なんとか見知ら居て、君が辺りを見渡すと、少年達が自転車に乗って逃げていく後ろ姿が見えた。
「待て、返せぇ!」
君は必死に追いかけるも、少年達を見失ってしまった。
しばらく自転車に乗って、少年達を探し回ったのものの見つけられず、君は、もう一冊新しいのを買いに、あの魅力的な表紙のエロ本を買った自販機に向かう。
しかし、あの魅力的な表紙のエロ本は売り切れていた。
君は、とぼとぼと帰宅していく。
居間には誰もいない。
君は居間をしょんぼりしながら横切り階段を登ろうとした時、
「おかえり、ちょっと聞いてよ」
母が呼び止めてくる。
「お父さんたらね、珍しく早く帰って来れたんだから、せっかくだし家族3人で夕食を取りましょうって私が言ってるのに、腹が減ったから先にひとりで食べるって言い出すのよ!」
間髪入れず父が、
「良いだろ、もう! こうして皆で食う事になったんだから」
とキレながら、階段前の椅子にドスンッと座った。
母がぐつぐつ煮込まれた鍋を持ってきて、
「さっ、皆で食べましょ」
食卓の置かれたカセットコンロの上に置く。
間髪入れず父が、
「よし食おう、早く座れ」
と箸を持った。
「うん」
「こうして、皆で食べるの久々ねぇ」
「そうだなぁ」
「お父さん、泊りがけの仕事や、残業ばかり、御飯は毎回、こうして皆で食べたいわ」
母が少し悲し気に、微笑み言う。
「ああ、家族って良いよなぁ」
父も少し悲し気に、微笑み言っている。
「あっお父さん、ビールついであげますよ」
「鍋は皆で囲むとおいしいや」
とか両親が感慨深く言ってるのを、君は無視して御飯をもくもくと食べ続けた。
エロ本を失った悲しさで、味が全くしない。
ただ黙り込んで食べ続けていると、
「どうした、食欲ないのか?」
父が君の様子を不審に思って尋ねてきた。
「うん、ちょっと……気分が……」
「あら、せっかく家族でご飯食べれたのに……」
母が残念がる中、
「御馳走様……もう良いや……」
と君は立ち上がる。
「おう、ゆっくり休めよ……」
父が椅子から立ち上がり、階段への道を開けてくれた。
君はゆっくり階段を登り、自分の部屋へと入って行く。
しばらくすると、階下から、
「家族のためにやってんだろ!」
父の怒号が聞こえてきた。
「何よ、そればっかり!」
と母の喚き声。
またケンカが始まったらしい。
君は、ベッドに寝転がり天井を見つめる。
もう、ため息しか出なかった。
The Bad End.
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