「ミニゲームブック」あまりに魅力的なエロ本

月コーヒー

  1

 だいぶ昔の事……。


 君はまだ中学生だ。

 なのに君は今日、エロ本を買ってきた!


 あの田んぼ道にポツンとある小屋の前の自動販売機で、あまりに魅力的な表紙のものを見つけて以来、欲しくて仕方なかった……。


 君は今日、学校帰りに、親戚の兄貴の家でバイクのメンテナンスを手伝った後、つなぎ姿のまま帰宅。

 その帰路の途中で、貯めたお小遣いで悲願のエロ本を手に入れる。

 そして只今、猛スピードで自転車をこいで帰宅しようとしているところだ。


 君はまだ実家に住んでいる。


 覚えているか? 隣の家は、好きだったアユミの家だ。

 急いで部屋に戻りたかった君は、全身黒のジャージ姿の怪しいおじさんがアユミの家から出て来たのにも気づかず、自転車を駐車し、玄関へと続く砂利道を進んでいく。


 父も母も、もちろん健在。

 君の実家は、まず玄関から入って左手にトイレ、右手に居間。

 居間には、食卓を囲んで3つの椅子とテレビとあとタンスとかが置いてある。

 8畳の居間は台所と硝子戸一枚で遮られて、台所の先に風呂があった。

 そして居間と台所の境くらいに階段がある。

 そこを上がれば、君の部屋と使ってない物置と化した部屋があった。

 君はいつも帰宅すると、玄関から居間を横切り、奥にある階段を上がって自分の部屋に行く。


 思い出してきた? 自分の部屋に行くには、家族のいるかもしれない居間を通るしかなかったのを……。


 だから君は、エロ本を買ってきた時はいつも玄関左のトイレにいったん潜み、様子を窺ってから自分の部屋に行っていた。


 今日も、君は、買ったエロ本が中に入った手提げカバンを大事に持って、玄関の引き戸をゆっくり音の出ないように開け、静かに靴を脱ぎ家の中に入った。


 左へと上体を向け、トイレのドアノブを回し、中に忍び込むように入る。

 消臭剤の臭いが鼻に入りながら、君は便座に腰かけた。

 そして息をひそめ、家族の出方を伺う。


 聞き耳を立てていると、母のキーキー声と、父のガーガー声が交互に聞こえてきた。


 それは居間の方から聞こえてくる。

 いつもは遅く帰ってくる父が、今日に限って早く帰ってこれたらしい。


 聞こえてくる声に注目すると、母と父は、激しく口論しているのがわかる。

 いつもの母と父のケンカだ。


 君は、ため息を漏らし俯く。

 すると、膝の上に置いた手提げカバンが視界に入る。

 その中に入っている、あまりに魅力的な表紙のエロ本の上部も見えた。


 君は、じっとエロ本を、愛おしく見つめる。


(……早く中を見たいなぁ)


 口論はまだ続いている。

 終わりそうはない。


(……これはすぐには動けないなぁ……)


 君は頭を抱えた。


(……いったん外に出て街中をぶらついてくるかな……ほとぼりの冷めたころを狙って……。

 ……。

 ……しかし……)


 と君はエロ本を見つめる。


(……早く中を見たいなぁ、ここで、ちょいと見て見るかな? いやいやお楽しみは後だろ、ゆっくり部屋で読もう……)


 さて、どうする。



   ◇エロ本をちょいと見てみる             なら4へ



   ◇エロ本は後でゆっくり、外をぶらついてくる     なら5へ

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