甘い生活〜藤次と絢音のイチャイチャストーリー集〜

市丸あや

第1話 遅刻常習犯

アラームは、美味そうな出汁の匂いと、ネギを切る小気味いい音。


目覚めると、エプロン姿の君が、台所で鼻歌混じりに、朝食の準備をしている。


「おはよう。」


そう言うと、満面の笑顔で、君は振り返ってくれる。


「おはようございます。藤次さん!」


誰かにおはようと言う生活。


誰かにおはようと言ってもらえる生活。


あぁ、


結婚したんやなぁと、実感する朝。


幸せで、胸がキュウってなる、そんな朝。


向かい合わせの席について、仲良く手を合わせる。


「いただきます。」


きみがいるだけで、何気ない日常が、キラキラ輝いて見える。


ホンマに、幸せやなぁ。


「仕事……行きたない。」


「また行ってる。」


クスリと笑う君。


冗談やない。


ホンマに、行きとうないねん。


君が家にいてくれてることが、ホンマに嬉しねん。


一日中君の側に居て、君の顔を、仕草を、近くで見ていたい。



せやけど、時間は無常にも過ぎていく…


「定時で帰ってくるけんな?どっこも行ったらあかんで?!」


「お買い物くらい行かせてください!」


半ば呆れてる君に背中を押されて、渋々玄関まで行って、革靴に足を滑り込ませる。


「はい。靴べら。」


「ん。」


靴べらを受け取るフリして、君の頬にそっと口付ける。


「ーーッ!」


たちまち赤くなる君が可愛くて、思わず悪戯したなる。


「絢音もして?」


「えっ!」


「はよ。」


わざとらしく頬を突き出したら、遠慮深げにキスをしてくる君が可愛くて、いよいよ仕事が嫌になってきた。


このまま時間、止まればええのにな。


はにかむ君を抱き締めながら、今日の遅刻の理由を考える。


さて、


あと1時間……なにしよか?




【終】


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