先人の知恵

 先人の知恵は素直に聞いておくべきである、という意見には異議を唱えたい。なぜなら先人が持つ知恵は過去であり、早急に意見を求めている人間は、今を生きているのだ。


 そして、これから先を生きることになり、間違っても過去を生きるわけではない。

 過去を生きる予定があるのであれば、その過去を生きてきた先人の知恵は他の情報よりも価値と効果を持つ必勝の武器だが、過去は過去のまま、未来にやってくるわけではない。


 終わったことなのだ。


 さすがに体験で得た知識と知恵が無駄になったわけではないが、それをそのまま利用しても当時と同じ効果を期待できるかと言えばそうではないだろう……、どれだけ革新的な知恵でも過去のものである。


 過去は今のようにインターネットが発達していたか?


 コンプライアンスが厳しかったか?


 最高気温は何度だった?


 子供たちは外で元気に遊んでいたかもしれないが、それは選択肢がなかっただけなんじゃないのか? もしも当時、いま前線で活躍しているゲーム機があれば、子供たちは公園とゲーム機、どっちを選んで遊んでいただろう?


 全員が全員、ゲーム機に飛びつくわけではないが、やはり大多数が寄る方へ寄っていくだろう……、話題はコミュニケーションを取る上で必須である。

 テレビ番組、話題の動画、漫画や映画など、一緒に体を動かすことよりも、コンテンツから生まれる会話が重要視されている。

 その分、知らないとそれだけで仲間はずれにされてしまう可能性もあるが……知っていれば輪に混ざれるのだ。


 昔よりも公園で遊ぶ子供が減った……、それは嘆くことではない。


 体を動かすことが不得意な子供も、得意な子供も、話題一つで繋がれるようになったのだから。運動部系と文化部系を繋いだのが、今の世の中なのであれば、老人が深く考えもせずに「自分たちの若い頃は外で遊んでいたのに……」と、言うのはいいが、押し付けるべきではない。


 とは違うのだ。


 その時代を否定するわけではないが、今に持ってくる必要はない。


 きっと、過去に魅力を感じ、意識して外で遊ぶ子供もいるだろうし……、そういう輪が広がれば、昔のような光景が戻ってきてくれるかもしれない……。

 ――鬼ごっこ、かくれんぼ、ボール遊びなど。


 元気に走り回る子供たちを見られる未来が、あるかもしれない……。


 そのためには、まず公園の厳しいルールを緩和させる必要があるが……。



 先人の知恵を押し付けるよりも、

 その経験を活かした先見の明を発揮してもらいたいものだ。

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