第4話 騎士との出会い

 自室から騎士の間に向かうまでに中庭がある。

小さな花々が咲き誇る綺麗な庭だ。


昔は人々が集まって穏やかに過ごしていたのだ。

今となっては花々が粛々とあるのみなのだが。


 少し寂しさを覚える中庭に辿り着いた時


「おや、アモル様。

こんな所でお会いするなんて奇遇ですね。」


そう一人の男が話しかけてきた。


肩を越える鳶色の長髪

心を見透かすような切長の深紅の瞳。

 

「ハスグラッジさん…。」

 

その背後にももう一人。

少し長めの前髪で表情を覆い隠す鳶色の髪

真意を隠すように髪に隠される鳶色の瞳


「マタルさんも…。」

 

「…お久しぶりです、アモル様。

 ハスグラッジが何か失礼をしてないでしょうか。」

 

少し目を伏せながらマタルは話す。


それに対してハスグラッジはというと

柔かに笑みを浮かべながら


「失礼なんて…嫌ですね

ただ挨拶をしただけじゃないですか、ね?」


私を一瞥し首を傾げる。


「それが失礼だと

 マタル卿は言いたいのですよ。」

 

二人の会話に落ち着いた柔らかい声が、鋭く刺さる。

 

「ハスグラッジの軽々しい態度が問題だって

そのまま言った方が本人の為じゃないか?」

 

次いで少し少年味の混じる冷たい声が響く。


「ボノスさんにナーダさんまで。」

 

魔性の槍使いハスグラッジ

冷静沈着な魔法剣士マタル

心を読む双剣士であり薬師ボノス

冷酷な若き天才剣士ナーダ


 この国には皇帝とそれを支える十の騎士がいる。


この国[インズ・アレティ]は領土を11に分けて構成されている。

各騎士の治める領土と女帝の治める[王都]に分けられ

十の騎士と女帝がこの国の中枢を担っていて

その十騎士の中でもリーダー格として扱われるのが

『四騎士』


 そして

今目の前に揃った四人がその四騎士なのだ。

 

「四騎士が揃うなんて珍しいですね。」

 

四騎士は各領地を巡回し

国民の安全を守る事を優先しており

一箇所に集まる事など無かった。


「そうですね。

今日は会議があるとの事で皇帝より招集がかかりましてね。」


とボノスが穏やかに続ける。


「詳しい事はこれと言って

聞かされていないので分かりかねますがね。」

 

少し困った様に笑みを浮かべる。


そこへマタルが続けて口を挟む。


「…恐らくは次の王位継承についてだろう。

継承については全ての騎士と皇帝

継承権を持つ者で話し合うと決まっているからな。」

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