Children of Emerald Moon

ミド

第1話『黄昏』 終わりかもしれない旅の始まり

七の月 始日


 新しい人と冒険をすることになったので、また一から日記をつけ始めた。

今日私が出会ったのは、ベルンハルト・グルドエクセ、通称ベルンという名前の男の子だ。本人曰く十四歳なので、私より二つしか離れていないことになるが、彼の雰囲気は「男の子」としか言いようがない。

 私達は町の日雇い掲示板の前で出会った。他の冒険者から馬鹿にされていたところを、私が割って入ったのがきっかけだった。暫く話す内、どうやら彼は旅が初めてらしいとわかったので、私の方からベルンに同行を申し出た。


 前の日記には結局結論を書かなかったが、ベルンとの旅が上手くいかなければ、もう冒険は終わりにしようと思っている。今まで散々、知り合った人たちと嫌な別れ方をしてきた。次に失敗したら、それで十分だ。私には旅は向いていなかったということで、家に帰って何処かに奉公先を探さなければならない。


 さて、初日なので今までのやり方どおり、今日はまずベルンについて聞き出せたことを書こうと思う。



――ベルン(ベルンハルト・グルドエクセ) 人 アスガルズ山出身 


 アスガルズ山は私が今滞在しているヴィーダルラント王国西端ヴェステルの町の北にあり、標高は高いが、体を格別鍛えていない私のような者でも途中にある修道院までは難なく登れるという。

 その山の中の一軒小屋で、血の繋がらない母に女手一つで育てられた彼は、今まで山の木を切っては町に売りに行く事で家計を支えていたそうだ。突然家を出る事になったが、武術は母親にある程度習ったので心配はしていないという。

 話している内に聞き出せたのだが、彼の長所は寧ろ、修道院のお坊さんたちに複雑な所まで読み書きを教わっているという点ではないかと思う。これは例えば薄給で無理難題を押し付ける仕事に出くわした際に判事への嘆願書を書くだとか、武力以外の解決手段を持っているという事だ。又は、傭兵として仕事をする際にもいい役職を用意してもらえる可能性がある。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る