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  • 第4話 先自隗始への応援コメント

     リノウに充てた『離脳』はSF書きの端くれとして唸ってしまうものでした。そして、まさにその脳から精神なり意識なりが離れる瞬間、離れて乗り換えた後の表現が印象的で骨太な作品でした。痛みの中で到達する精神世界、マングローブの上のカヌーや度々主人公を導く妻の姿の天使。超越感、高揚感の中に不思議な説得力があります。ただ、骨太と称したのは読み手としての自分に若干のエネルギー不足を感じる部分があったからというのも事実です。最初に主人公と身体を交換した黄大樹氏の背景と彼が乗る時間跳躍の大きな矢印の原因と結果を私は十分に解釈できていません。(恐らく作者様の意図したものではないと思いますが、)一度手術を経た後の主人公の主観と語りはどこか達観したような乾いた質感を伴うようになっていました。三度目の頃には一癖も二癖もありそうな人物たちと関係を持つのですが、その頃にはキャッチコピーにある「私は私」の叫びがどこか希薄に感じます。何に溶けたかと言えば退廃首都を土台に時間跳躍という厄介な事象を扱うその世界観に、でしょうか。
     とは言え、全部を事細かに順を追って描いていてはこの魅力は出せないのだと思います。美しき浮遊感、面白さを忘れない厄介さ難解さ。そんなSFの魅力を思い出させてくれた作品でした。

     大変遅くなり申し訳ありません。この度は自主企画にご参加いただきありがとうございました。

    作者からの返信

    kinomiさんお読み頂きありがとうございます。

    確かに仰る通りでして、私に「アルジャーノンに花束を」を書いたダニエル・キイスの筆致力があれば満足はされたと思います。

    とは言え。他の作品でも上げられたのですが、何故この状況になったかが分からないと。不可抗力で地獄を見る経験って、何でよりによって私がでも有り。流れによっては状況説明出来るとは思うのですけど…文字数もでして。長編中編では読まれもしませんし、私の時間の取れ次第なのですが。

    あとは人物の変遷に関しては、臨死体験するとやたらクリアになってしまうものです。俺は俺だは、それでも踏みとどまりたいとの、主人公の歯噛みそのもので、これはこれかなと思います。

    まあですね。時間効率を考えたら、ギュッとの中編若しくは短編しか書けないのが、私のカクヨムライフですね。

    編集済