リヒテンシュタイン家 一
翌日、我々は当面の活動目標を巡って作戦会議と相成った。
場所は昨晩と変わらずザック氏の家。
精霊殿の回復魔法のおかげで身体のコンディションは抜群だ。
「昨日はゆっくり眠れたかい?」
ダイニングに集まった我々は、同所に設けられた長方形のテーブルを囲んでいる。四人がけの内一方に自分と少女が並び腰掛けており、その対面にザック氏が座っている。精霊殿はテーブルの上だ。
ミレニアム氏からは、私抜きで進めて欲しいとの言伝を頂戴した。彼のスタンスとしては、何も見ていないし聞いていない、とのこと。妻子ある身の上であれば、当然の判断だと思われる。むしろ、ザック氏がやんちゃなのだ。
ちなみに銀行に預けていたお金は、今もオバちゃんの名義で存在していた。ザック氏にプレゼントしたものだからと、一度は所有権を辞退したのだけれど、流石に受け取れないと、彼からもお返しされてしまった。金貨百枚、結構な財産である。
「久しぶりにベッドで眠れました。ありがとうございます」
「それはよかった」
少女と言葉を交わして、満面の笑みを浮かべるザック氏。こうして眺めている分には、気のいいイケメンとして映るから不思議だ。昨晩の出来事は自身の胸の内に秘めておこうと思う。少なくとも今回の一件が落ち着くまでは。
「早速で申し訳ないのですが、二人に確認したいことがあります」
二人を眺めて、オバちゃんからお声掛けさせて頂く。
あまり交流を重ねて、彼の性癖が少女にまで伝わっては大変だ。
「僕でよければ何でも聞いて下さい」
「わ、私も知っていることは全てお話します」
「ザックさんには以前もお伝えしたとおり、私はこの国の人間ではありません。そこでお手数を申し訳ありませんが、リヒテンシュタイン侯爵について教えてもらえませんか? 今後の対応に向けて、作戦を練りたく思います」
「なるほど、そういえばそうでしたね」
「そういうことでしたら、私から説明させて頂いてもよろしいでしょうか?」
「ええ、お願いします」
リヒテンシュタイン家の人間というポイントをアピールしたいのだろう。
率先して声を上げた少女が語り始めた。
要約すると彼女はリヒテンシュタイン家の末娘であったそうだ。現在のリヒテンシュタイン侯爵は彼女より一回り年上の長男だという。また、先代である彼の父親とその実母は、数年前に事故で亡くなっているのだとか。
同家が本国に対して態度を強め始めたのは、長男がリヒテンシュタインの家督を継いでからのことだという。領地の運営も以前より良く言えば意欲的に、悪く言えば厳しく行われるようになったのだそうな。
また、肝心の独立騒動についてだが、なんでもリヒテンシュタイン侯爵には、血族の他に協力者がいるらしい。しかもそれは、領地と国境を接した隣国の人間だという。ただ、詳しい名前までは少女も知らないとのこと。
何故そのようなことを子供である彼女が知っているのかと言えば、偶然から長男と隣国の人間の打ち合わせを覗き見してしまったのだという。結果的に彼女は家族から追われる羽目になり、命からがら市井まで逃げてきたらしい。
それがかれこれ数ヶ月前の出来事であるという。
思ったよりも重たい話の流れだ。
つい先月までは、この町にも侯爵家による捜索の目があったそうだ。だが、ここ数日はほとんど見られないという。今回の騒動で独立さえしてしまえば、もはや末娘の生き死にには意味がないと考えたのだろう。
「それはまた随分と大変な目に遭われていたのですね」
「いいえ、わ、私は平気ですっ!」
「僕で良かったら力になるよ。気軽に頼ってほしいな」
ザック氏がすかさずアピって見せる。
言動こそ昨日までと変わらない一貫したもの。しかし、昨晩の氏の頑張っている姿を確認した後では、まるで別の光景のように見えるから不思議だ。ただ、そもそも考えてみれば、彼は男で炎の女児は女なのだから、当然の下心である。
現代日本に感化されたことでロリコン扱いしていたけれど、文明レベルの異なるこちらの世界において、十代も中頃の少女は半分大人のようなものである。昭和以前の日本では結婚している方も多かった。
そう考えるとザック氏に対するロリコン判定は、こちらのエルフの行き過ぎた判断ではなかろうか。などと考えたところで、そう言えば彼は精霊殿のことも、オナペットにしていた。やはり、氏はロリコンである。
「一つ確認したいのですが、隣国との国交は友好なものでしょうか?」
「可もなく不可もなく、といったところだね」
そういう曖昧な感じが一番怖いと思う。
どちらにでも容易に振れる可能性があるということだ。
「そうなると今回の一件は、下手をしたら本国にとって国難となり得るかも知れませんね。隣国が何を考えて侯爵の独立を支援しているのかは分かりませんが、こちらの国にとって良い影響があるとは決して思えません」
「うん、そうだね……」
少女からの説明を受けて、続く言葉に悩む大人二人。
当初は侯爵の手勢を飛行魔法で上げ下げして一件落着、みたいなことを考えていた。しかしながら、彼女の言葉が本当だとしたら、侯爵を退けただけでは終わらないかも知れない。むしろその後で、とんでもない横槍が入ってくる可能性がありそうだ。
「なぁ、どうして難しい顔してるんだ?」
「精霊殿、少しばかり面倒な状況です」
落ち着いて考えてみれば、勘ぐって当然の背景ではなかろうか。リヒテンシュタイン侯爵がどれだけ優れた兵団を率いていたとしても、他に大勢の貴族が犇めくだろう一国家を相手に、単独独立を目指すなどリスキーな行いである。
自分のような素人でも、なんかヤバそうだなぁって思うもの。
「なんで面倒なんだ?」
「下手をすると、隣国との戦争に巻き込まれかねません」
いやしかし、貴族になってチヤホヤされるという目標の為には、多少のリスクは取って然るべき。こういった機会でもなければ、人類カーストを三段飛ばしで駆け上がるような真似はできないでしょう。
「隣の国と戦争するのか?」
「そうなる可能性があります」
「戦争すると、どうなるんだ?」
「……さて、どうでしょう」
思い返してみれば、こちらのエルフは隣の国の名前はおろか、こうして活動している国の名前すら知らない。そんな自分が世論を語るなど、バカげた話もあったものだ。なんだか恥ずかしい気分になってくる。
そうした思いを拾ってくれたのがザック氏だ。
「我々の国は歴史こそありますが、国力は周辺各国と比較して、あまり褒められたものではありません。以前は魔法技術に秀でた国家として名を馳せていたようですが、それもここ最近は、周辺各国からの追い上げを受けております」
「なるほど」
「隣国がどこまで本気で攻めてくるか、その程度にもよるとは思いますが、もしも両国間で戦争となった場合、苦戦を強いられることは間違いないと思います。しかも戦場となるだろうリヒテンシュタイン侯爵領は、我が国でも指折りの農業地帯です」
聞けば聞くほど危うい気がしてきた。
この町も、リヒテンシュタイン侯爵領に近いということは、国境に近いということだ。来年あたりには、近隣が戦場になっていそうな雰囲気を感じる。正門前に集まっていた難民たち。あの中に混じって声を上げる自分の姿を想像してしまった。
そして、精霊殿も同じようなことを考えたのだろう。
彼女から続けられた言葉は非常に的を射たものであった。
「だったら尚更放っておいたら不味いんじゃないのか?」
「ええまあ、その通りだと思います」
我々が動こうが動くまいが、いずれにせよピンチである。
隣国がどういったことを考えて動いているのかは定かでない。ただ、たとえば侯爵領の独立を幇助しているのが、後々の吸収合併を目指した施策であるとすれば、その先にはこちらの国に対する宣戦布告が待っている可能性は高い。
それが来年になるのか、十年後になるのかは分からないけれど。
「よし、そういうことなら、絶対にコイツを家に連れて行くぞ!」
「どうして精霊殿は、そこまで彼女にこだわりを持つんですか?」
「戦争が始まると、ニンゲンがお酒を作らなくなる!」
繰り返し精霊殿から決意表明を頂戴した。
非常にアル中らしい理由で好感が持てる。
オバちゃんも前向きに検討を進めるとしよう。
「たしかに隣国への対抗策としては、これ以上ない提案だと思います。ただ、そうなってくると我々だけでは心もとないものがあります。そこでリヒテンシュタイン家の娘さんに確認させてください」
「な、なんでしょうか?」
「貴方がリヒテンシュタイン家の当主となったとき、その旨味を分け合える家柄で、尚且つ貴方の後ろ盾になってくれそうな人物をご存知ありませんか? 身分は高ければ高いほど嬉しいのですが」
「…………」
切った張ったやり取りでは負ける気がしない。しかし、ソーシャルな戦闘力については、非常に心もとないのが我々のパーティーだ。その戦力はホームレスに堕ちた本家の末娘が一人と、平民の男が二人、アル中の水の精霊が一匹。
この体たらくでは、きっと誰も我々の声を聞いてくれない。まず間違いなく無視される。子会社の派遣社員が親企業の事業部長にアポを取るようなものだ。そこで顔役的な人物を一人でもいいから用意する必要がある。
「……一人だけ、思い当たる方がおります」
「ぜひ教えて下さい」
少しばかり考える素振りを見せてから、彼女はボソリと呟いた。
ただ、その表情はどこか覚束ないものである。
「私の叔父に当たる人物なのですが……」
「どちらの方になりますか?」
「リヒテンシュタイン侯爵領の隣に領地を構えている伯爵です」
「面識はありますか?」
「はい、何度か会っているので、相手も覚えていると思います」
「素晴らしい、地理的にも肩書的にも申し分ないですね」
いい感じである。
ただ、それでも少女の顔はすぐれない。
人格に問題あり、といった感じだろうか。
「なにか不都合でもありますか?」
「いえ、そ、その……」
しどろもどろする様子は見ていて不安を覚える。
ただ、その理由が彼女の口から漏れることはなかった。
「やっぱり、なんでもございません。話を通す必要があるのですよね?」
「すみませんが、お願いできませんか?」
「はい、承知しました」
「ありがとうございます」
そうなると、すぐにでも動いたほうがいいだろう。戦争は一度始まってしまったら、なかなか止められないと思う。少なくとも学生時代に学んだ歴史では、そういうことになっていた。きっとそれは、こちらの世界でも同じだろう。
また被害が大きくなれば、後々の領地経営にも支障を来す。
精霊殿の言葉ではないが、お酒造りも滞るようになるだろう。
◇ ◆ ◇
ザック氏の家を出発した我々は、少女の叔父さんの家に向かった。
本来であれば馬車で数週間が掛かる道のり。それもエルフご自慢の飛行魔法を利用すれば、あっという間である。小一時間ほどで我々は、目当てとなる伯爵領、その当主の屋敷までやってきた。
ちなみに出発の直前、少女には幾分か上等な衣服に着替えてもらった。資金提供はアラサーエルフのポケットマネー。お店はザック氏の紹介。まさか浮浪者スタイルで臨むわけにはいかなかった。
これと併せて自身もまた、少しばかりフォーマルな姿に着替えての参加である。森で出会ったエルフたちの姿を参考にコーディネートさせて頂いた。緑を基調としたローブ姿。オバちゃんなので露出は控えめ。おかげで威厳と貫禄が三割増しといったところ。
そんなこんなで臨んだのが、同邸宅の応接室。
上座にはでっぷりと太った禿頭の男性が、ドンと腰を落ち着けていた。
「おぉ、エルフリーデ! まさか生きていたとは思わなかったぞ!?」
開口一番、彼は驚いた様子で告げてみせた。
出発前に受けた説明の通り、少女は親族の間で既に死んだものとして扱われていた様子だ。部屋に一歩を踏み入れた我々。そこに彼女の姿を目の当たりにするや否や、先方は席から立ち上がり、腹に付いた肉をぽよよんと揺らして見せた。
こちらのオバちゃんにも増して、ふくよかな体型の持ち主である。他人の膨らんだ腹部を目の当たりにすると、後回しになっていたダイエットに対して、否応なく焦りを感じる。痩せなければという衝動に駆られる。
今日からご飯は一日一食で頑張ろう。
多少無茶をして体調を崩しても、精霊殿の回復魔法があればきっと大丈夫だ。
「お久しぶりです、叔父様」
「よくぞまいった! ささ、そこへ掛けるといい」
叔父様はニコニコと笑顔を浮かべて少女に席を進める。
彼女は素直に頷いて、促されるがまま彼の対面に設けられたソファーに腰を落ち着けた。一連の立ち振る舞いには、これといって躊躇する様子は見られなかった。傍から眺めた限り、それなりに友好な関係にあるように思われる。
しかし、そうなると出掛け間際に目撃した彼女の憂いは何だったのか。
「ところでエルフリーデ、その者たちは何だ?」
彼女が座ったことを確認して、叔父さんの意識が我々に移った。
人間、エルフ、精霊の組み合わせである。
非常に胡散臭い。
こちらを見つめる彼の表情も訝しげなものだ。
「私の命を助けてくれた恩人の方々です」
「命の恩人?」
「町で彷徨っていたところを助けてもらいました」
「町は彷徨っていた? エルフリーデ、それは一体……」
「その話は後でちゃんとお話いたしますので、できれば皆様を……」
「そ、そうか。なら今はオマエの言葉を信じよう」
先方の態度は、少女の言葉を耳にした途端に一変した。
再び席から腰を浮かした彼は、彼女と同様に、我々に対しても席を勧めてみせた。おかげで身じろぎをするたびにポヨンポヨンと揺れる腹の肉が、オバちゃんの意識を奪う。こうなってはいけないと、減量への意識が高まっていくのを感じる。
「姪の命の恩人とは思わず、失礼をすまなかった」
「こちらこそ突然の来訪申し訳ありません」
「ささ、座ってくれたまえ」
促されるがまま、空いていたソファーに腰を落ち着ける。
余談となるが、入室してから精霊殿が大人しくしているのは、事前に礼儀的なあれこれを言い聞かせた為だ。本日のお相手はお貴族様である。ミレニアム氏とのトークに垣間見たふてぶてしい態度は、まず間違いなくアウトだろう。
それをやったら少女を家に帰せなくなると、口を酸っぱくして伝えた。おかげで勝手に部屋の中を飛び回ることなく、エルフの隣に浮いている。当然、事前の飲酒も固く禁じており、素面での参上である。
「して、エルフリーデよ。今し方の話についてだが……」
「それを聞く前に一つ、叔父様にご確認したいことがあります」
「……なんだね?」
「叔父様は今でも、私の父や母の味方でいて下さるのでしょうか?」
「それはもちろんだとも。私は今でも弟夫婦の味方さ。あのときの事件は惜しいものであったと、今でもふとした拍子に寂しい気持ちとなる。領主としてもよくやっていたところ、惜しい男をなくしたと思うよ」
「二人のことを大切に思って下さりありがとうございます。けれど、私が確認したいのはそれとは別にございます。叔父様も既にご存知だとは思いますが、現リヒテンシュタイン侯爵であるお兄様が、国を裏切ろうとしております」
「……それも知っているよ、エルフリーデ」
「叔父様はお兄様の味方なのでしょうか?」
「…………」
少女からの問い掛けに、叔父様は悩むような素振りを見せる。
彼女の心中を計りかねているのだろう。
ややあって、彼は少しばかり声の調子を落として続けた。
「私も止めるように使者を送ったのだがね。彼の意志は本物であったよ」
「……そうですか」
どうやら身内の行いについては、存じていらっしゃるようだ。同じリヒテンシュタイン一族とのことで、場合によっては共謀関係にあるのではとも考えていたのだけれど、その点については杞憂だったと考えていいのだろうか。
いいや、まだ分からない。
「しかし、それとエルフリーデにどういった関係があるのだね?」
「私が町を彷徨っていたのは、お兄様に殺されかけたからなのです。お兄様が隣の国からの使者と独立の話をしているのを聞いてしまったのが原因です。その日の内に食事に毒を盛られて、私に仕えていたメイドが一人死にました」
「な、なんと、それは本当かね?」
「本当です」
「……ふぅむ」
叔父様の表情が深刻さを増した。
領地が隣接していることを思えば、彼としても他人事ではあるまい。同じ一族とは言え、侯爵領が独立したのなら、自身の収める領地が他国と接することになるのだ。そして、その背後に隣国の影があるとなれば、不安にならない方がおかしい。
購入から間もない分譲住宅の隣家に、DQN一家が引っ越してきたようなものだ。深夜のバーベキューパーティーや、改造車のアクセル空ぶかしは避けられない展開である。事前にどうにかしたいと考えて当然ではなかろうか。
「急くようで悪いが、その時の話は覚えているかね?」
「覚えてはおりますが、今話した内容が私の聞いた全てとなります」
「そうか……」
だからこそ、我々としては都合がよろしい。
この様子であれば、彼を交渉の席に着かせることができるのではなかろうか。少女との仲もそれなりに円満なようだし、侯爵を退けた後の問題についても、上手いこと解決できそうな気配を感じる。
仮に隣国と面倒なことになっても、リヒテンシュタイン侯爵の地位と領地を叔父様に譲渡の上、彼の下に少女を配置。そして、彼女の下にオバちゃんが滑り込む、といった形を取れば、自身が面倒ごとの矢面に立つシーンは少なくなるだろう。
よし、それだ。
「すみませんが、私からお話させて頂いてよろしいでしょうか?」
「……なんだね?」
「単刀直入に申し上げまして、我々はリヒテンシュタイン侯爵を討とうと考えております。それがエルフリード様の願いであります。差し当たってリヒテンシュタイン伯爵には、我々の後ろ盾となって頂きたく参りました」
「…………」
先方としても、多少は想像していたことだろう。
叔父様は取り立てて狼狽えることもなく、こちらのエルフをジッと見つめてきた。真意を窺うような眼差しである。ややあって、その意識はオバちゃんから離れると、隣に座っている少女に向けられた。
「エルフリード、この者の言葉は本当なのかね?」
「ええ、本当です。叔父様」
「…………」
すると叔父様はハァと深い溜息を吐いて見せた。
そして、彼の口から続けられた言葉は――
「誰か、この者たちを捕らえよ」
「っ……」
「リヒテンシュタイン侯爵の意志は一族の総意なのだよ」
どうやら既に侯爵の息が掛かっていた様子だ。
残念、我々は賭けに負けたみたい。
「お、叔父様、私たちを騙したのですか!?」
「いいや、騙してなどいない。決して悪いようにはせんから、少しばかり大人しくしているといい。エルフリード、若いオマエにはまだ未来があるのだから、このような下らないことで苦労することはない」
「は、離して下さいっ!」
どこからともなく雪崩込んできた兵が少女の身柄を拘束する。
我々も同様だ。
咄嗟に精霊殿が反撃せんと身構える。
「あぁ、君たちも大人しくしていたまえ。さもなくば次の瞬間にも、君たちの野望は水泡に帰すことになるだろう。どれほどの兵力を用意しているのかは知らないが、それもリヒテンシュタイン侯爵の娘あってこそのものだろう」
「おいこらっ! それならこっちだって……」
「精霊殿、ここは堪えて下さい」
「なんでだよっ!」
「彼女の身の安全のためです。ここは我々の洞窟とは勝手が違うのです。どこから魔法が飛んでくるか分かったものでありません。狙いが我々であればいいですが、貴方が庇護した相手に当たったらどうするのですか」
「だけど、何かムカつくっ!」
「仕返しする機会は必ずやってきますよ」
「……わ、分かったよっ」
「ありがとうございます」
「それと、あの洞窟は私のだからな!? オマエのじゃない!」
「それは失礼しました」
そんなこんなで我々は牢屋に放り込まれる運びとなった。
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