第21話 19週目

 広崎さんの病状がまた悪化してたら…俺はもう彼女に掛ける言葉を探すことに精一杯で、病室に入るのに戸惑ってしまった。

 やっと心が決まってドアを開こうとした瞬間、病室から車椅子に乗った広崎さんが出てきた。

「こ、こんにちは」

「あ、陽介さん。丁度いいところに。今から中庭に行くところだったんです。一緒に行きましょ!」

 彼女は1週間で心を持ち直していた。

「病室から出ても平気なんですか」

「冬は外にいても汗かかないので。よく中庭に行くんです」

 彼女は必死に車椅子を進めた。

「車椅子、押しましょうか?」

「いいんですか! ありがとうございます!車椅子って意外と重くて、もう腕ぱんぱんなんですよ〜」 


 中庭には元気にはしゃぐ子供たちから、ベンチに座って日向ぼっこをするお年寄りの方まで多くの人が集っていた。それぞれが病を抱えているだろうけど、みんな穏やかな顔をしていた。

「中庭の雰囲気、私、すごい好きなんです」

「なんか優しい感じですよね」

 俺らは優しい雰囲気に包まれ静かになった。中庭での沈黙は、病室での沈黙とは全く違う心癒されるものだった。

 だけど、この優しい沈黙の中、彼女は神妙な顔つきで口を開いた。

「今日は、陽介さんに話したいことがあるんです」

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