第19話 17週目

 12月に入り、街はクリスマスに包まれていた。赤と緑が愉快に並んでいる。いつも立ち寄るスーパーではもうおせちの注文が受け付けられている。まだクリスマスも終わっていないというのに、日本人はせっかちすぎる。

 彼女の病室へ行くと、眠っている彼女の横に叶汰が立っていた。

「真結は今寝てる」

「そうか、じゃあ起きたらこのグミ渡しといて」

 俺は病室を出ようとした。すると、

「なあ陽介」

 叶汰の口から久しぶりに俺の名前を聞いた。

「死と向き合う覚悟はあるか」

 叶汰のその言葉は彼女の死を予知させるようなものだった。

「どういう意味だよ、それ…」

「もし覚悟がないなら、もう見舞いには来ないほうがいい」

 俺の言葉を無視して叶汰は続けた。

「陽介が人の死にめっぽう弱いことぐらい知ってる。だから俺はもう見舞いに来ることはお勧めできない」

 叶汰の真っ直ぐな目が俺の心に突き刺さる。でも俺はもう覚悟を決めているんだ。

「最初は偽りの彼氏だった。だけどもう俺の気持ちは本物なんだ。あの笑顔を絶対守るって決めたんだ」

 俺は真っ直ぐな目で叶汰を見つめ返した。

「どうやら俺とお前は同志のようだな」

 再会から4ヶ月。俺らはようやくまた手を取り合えた気がした。

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