私、人の思っていることがコマンドで見えるんです
朝香るか
第1話 授業中のクラスは割とカオス
あーまただわ。
授業中なんだけど、教室の中は赤い矢印←と青い矢印←と人の上には吹き出しがあって考えていることがわかるようになっている。
例えば女子。
『チョー暇すぎ。あ、枝毛。今日カットの予約いれよっと』
『授業面白いなぁ。しっかりノートとってみて復習なきゃ』
ギャル系の内心と真面目系女子の内心だ。真逆で面白い。
例えば男子。なぞに国語に時間に円周率唱えている人とか、野球とバスケとサッカーの部活のこと、恋愛系に振り切っている人とかで吹き出しがいっぱいなのだ。
『3,1419……』
『次はゴール決めて補欠でもいいから入るぞ』
『次はこう投げて、スライダーにして』
『来週の試合には3ポイント決めてやる』
(すんげーいろいろなことかんがているじゃん。でも授業聞いてあげて。先生かわいそうだから)
『あ、可愛いな。喋れないけど見ている分には至福の時だぜ。あー横顔もいいなぁ』
(あー、可愛いもんね。マリナさん。でもマリナさんはクラスのイケメン君に告るつもりらしいよ)
帰国子女の佐々木マリナさん。すっぴんにしか見えないし、実際すっぴんなんだろうけれど、本当にきれいなんだよね。私は勝手に学年一の美女と呼んでいます。
『あー今日こそ水谷君に告る』
その水谷君といえば
『あ、ゲームやりすぎてねむ。マリナとかいうケバイやつ話しかけてくんなよ~。マジ迷惑』
乙女よりゲームらしい。
(けばくないよ。すっぴんだから。あれは西洋風のいでたちだからかな。まつげ長いし、肌きれいだし。二次元しかみてないの?)
実は私、交通事故になってからこんな状態で錯乱しそうなのだ。まぁなんだかんだ楽しんでみているわけなのだが、悩み事がないわけでもない。
相談する人がいないこと、どこまで思考が見えたかを明かす行動をするのか、友人女子たちのウソの多さ。目下、現在悩んでいることは誰にも理解できないことだった。
(やっぱ無理。黒板が←と吹き出しで見えん)
単純計算で30近くの矢印と30はある吹き出しと文字が見えるのだ。声が聞こえないだけましだ。目が悪い設定で教室では前のほうに座らせてもらっていたのだが、健康診断で1.2という健康な視力だということが担任にばれたのだ。現在、一番後ろの席だ。黒板はほぼ見えない。まただれかにノート見せてもらわないと。
後ろ姿でこれなのだから前に向いたらもっとダイレクトになるのだ。例えば
「シャーペン貸してくれないかな?」と言われた。
本当に困った顔をして、筆箱の中身をチラ見せしながら言ってくる桜井りえさん。
しかし彼女の内心は大きく違う。
『この子のシャーペン使い心地いいんだよなぁ。何かのブランドもの? このままカリパクしたいわ~ 万引きなら、ばれないのに。1年で問題起こしたらまずいかな。でもこの子なら黙ってそう』
「いいけど。今日は予備のこれしか持ってないから、使い終わったらホームルームまでに絶対に返してね」
そして100均でかったかわいい系のシャーペンを貸した。
「う、うん」
『このまえのとちがー-うぅ。この貧乏娘!!』
相手が去ったあとはついつい脱力してしまう。
「つっかれたぁ」
思わず声が出てしまう。あの子は絶対腹黒い女子NO.1だ。
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