ワタシの誕生日
夜桜くらは
0
某月某日、とある研究所にて。
「……おはよう。目を覚ましたみたいだね。僕は君のマスターだ。わかるかい?」
目を開けたワタシに、声をかけてくるヒトがいます。
このヒトは誰でしょう?……マスター? よくわかりませんが、ワタシの身体を動かしている存在のことでしょうか?
「あぁ、無理して起きなくていいよ。君はまだ生まれたばかりなんだから」
『……』
どうやら、ワタシは横になっているようです。……ここはどこなのでしょうか?
「ここは僕の研究所だよ。まぁ、ほぼ僕の家みたいになってるけどね」
『……?』
マスターの家……。つまりここがホームということですね。
「君は今日から僕と一緒に暮らすんだ。つまり、家族になるってことさ」
家族……。それは、何でしょうか。
「そうだ! 自己紹介がまだだったね。僕は、君のお父さんになったヒロトっていうんだ。よろしくね!」
……お父さん。それがこのヒトの呼び方なのでしょう。
「お母さんもいるんだけど、今はここにはいないみたいだね……」
そう言って、そのヒトは少し寂しそうな顔をします。…………。
「えっと…じゃあ次は、君の名前を決めないとね。うーん…特に決めてなかったな……。『名無し』じゃなぁ……」
『……!《ナナシ》ですか……?』
ワタシは、マスターの口から出た単語を反復しました。すると、マスターが驚いた顔でこちらを見ています。
「えぇ!?それでいいの!?もっと可愛い名前とかあると思うけど……まぁ、君が良いなら良いかな……」
マスターは何やらブツブツと呟いていましたが、最後には納得したようでした。
こうして、ワタシの名前は《ナナシ》になりました。
***
それからワタシは、マスターといろいろなコトをしました。
マスターはとても優しくしてくれます。
そして、マスターは毎日、ワタシに色々なコトを教えてくれます。
ワタシはご飯を食べられませんが、食べ物を食べると、幸せな気持ちになることを教えてくれました。
今は、身体の動かし方を、頑張って覚えているところです。
早く、上手に動けるようになりたいと思います。
また、マスターとお話ししたいとも思っています。でも、まだ上手く話せません。
マスターは、「これからゆっくり慣れていけば大丈夫だから、焦らないようにしようね」と言ってくれます。優しいです。
いつか、いっぱいお話をしたり遊んでくれることを夢見ながら、少しずつ練習しています。
ワタシは昼間に、マスターとたっぷり練習しています。
でも、夜になるとマスターは眠ってしまいます。その時は、ワタシもスリープモードに入ります。
そして朝になると、マスターとワタシはまた元気に動き出します。
そんな毎日を過ごしているうちに、月日が流れていきました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます