第2話

翌日


「ふぁー、よく寝た・・休みが週2あるっていまだに信じられん」

寝癖がついた頭をかきながら軽い二日酔いが顔から伺える。

鏑木が眠気を覚まそうと洗面所に向かう、とその時呼び鈴が鳴りあくびをしながら玄関へ対応しに行くとその先には鏑木の見知った人物が二人佇んでいた。


「はーい!って、んんん?なんだ?どうしたんだ二人揃って・・」


「「おかーさんがまた出張だからって叔父さんの所行ってきなさいって言われた」から」」


「はぁ?!聞いてないよ?!」


「昨日連絡したっておかーさん言ってたよ?」


そう鏑木に伝える色素が薄く、触れると壊れてしまいそうな日現実感を漂わせる長い髪をした美少女「藤枝優驪」と


「おっさんからレスがすぐ来たからって用意しろってかーさんに言われたよ?」

優驪同様に色素が薄く、儚げな雰囲気はあるがどこか剽軽そうな感じを漂わせる双子の美少年弟「藤枝勇騎」



「ぇぇ・・・ちょっと確認する・・・あー本当だ酒飲んでたからそのまま返したのか・・・、まあいいや掃除する前だからかちょっと汚いけど上がりな」


諦めたような感じで二人に伝える、二人が勝手知ってるがの如く家の中に上がっていく。


「「お邪魔しまーっす」」


勇騎は居間のソファーに座りながら持参したお土産の封を開け、優驪が飲み物の準備をしながら鏑木が貯めていた洗い物を軽い文句を言いながら片付けていった。そこに顔を洗ってしっかりと整えて居間に現れた。


「お前達の部屋はそのままだから、掃除しときなよ? 食材ないからお昼は外に行こうかね」


「「はーい」」

「私は叔父さんの賄い食べたいんだけどなぁ、下手なお店より美味しいし!」

「俺も同意」


双子らしく息のあった意見を鏑木に伝えて少し、強請る様な風に同時に言うと鏑木はやれやれと言った感じで両手を挙げ


「おじさんは無から有は作れませ〜ん、食材買ってこないとなんにもないのよ!独り身だと食べにいった方が効率が良いのでね・・」そう言うと双子の返事も聞かずに自分の部屋に着替えに行ってしまった。


「前も同じ事言ってたよね。まだ彼女できないんだおじさん・・・」

「っし!おかーさんもあいつは枯れてるからって言ってたでしょ・・・、それにおじさんが独身だからこうやって気軽に来れるんだから、叔父さんが傷つきそうなこと言わないの!」

「はいはい・・そうだね、だから俺たちもおじさんに救われたんだしね。さって掃除しにいこ?」

「今お茶入れたばっかりだから、飲んでからね」


そう言うと、一服をしてから元二人の自室へと掃除に向かうのだった。


 鏑木和毅を取り巻く環境は少し複雑である。両親は和毅と姉の一美が自分達の手を離れると田舎に引っ込み、自由気ままな農作業と自営の仕事をしながらちょくちょく二人で旅行に行ってしまうほど放蕩であり朗らかな人達である。それ故もう何年も両親と会ってはいない、自分の体調を伝えて余計な心配をかけたくので鏑木は自身の起きた事を両親には伝えていなかった。そして鏑木の姉一美は若い頃から美人で才女でありながらも腕っ節も胆力も強く鏑木にとって頭の上がらない姉である。その姉一美は欧州へ語学留学をし、その先で壮大なロマンスをし身篭って帰国し双子を出産した。

 

その後は両親に子育てを手伝ってもらっていたものの、ロマンスの相手先の家が名家であった事があり、誘拐未遂や相当な嫌がらせがあった為、実家を離れてシングルマザーで育てていたが堪忍袋がブチ切れて、単身相手先の実家にカチコミに行き慰謝料と迷惑料をもぎ取って帰ってくるという斜め上の解決をした。

 その過程で双子の保護を弟和毅がしたのである。ASAPの社員寮のセキュリティは世界最高峰の堅固さを誇る為保護には打って付けの場所だったと言うことと、社宅が個人でも家族でも同サイズの大きさの為、和毅ひとりでは部屋を持て余している点もある。何より和毅が独身の時間と前職の経験もあって家事スキルが既に下手な主婦より高い物になっており安心して任せられたのである。その後悶着が終えた後は再び、姉沙織と双子で健やかな家庭を育んでいたが、沙織が仕事がら国内外問わずの出張や数日まとめて家を空ける事もあった為、その都度双子は和毅の自宅へと泊まりに来ているのだった。



「さて掃除終わったかー?」

居間で動画を見ている鏑木が双子へ声をかける


「「終わったよー」」


「はいよ、んじゃ昼飯食べに行って晩御飯のおかず買いに行きますか。何か食べたいものあるか?」


「私おじさんのだし巻き卵食べたい!!」

「俺はチキン南蛮!!」


「お前ら・・・地味にめんどいのを・・・・子供は子供らしくハンバーグとかステーキとか言いなさいよ・・・」


「「おじさんが美味しいの作るのが悪い」」

双子は屈託のない笑顔でちょっと満更でもない風な一叉にそう声を掛ける。


「まあ両方出汁引くのは一緒だからいいかぁ・・ロースビーフ食べたいとか言われた方が嫌だったからまだマシか・・・」


「「それはゆくゆく」」


「やだよ!?塊肉の調理大変なんだからな?!」


「「楽しみにしてまーす」」


「くそう・・・凝ったもの作りすぎたか・・・」


 和毅が長い独身生活の反動か、可愛らしい甥と姪の為にも持てる知識を使い、当時ゴタゴタのせいで心神喪失気味だった双子に甲斐甲斐しく手料理を振るい愛情をかけた結果である。本人も内心は嬉しい為、顔はにやけたままだったりする。料理は愛情である。





ところ変わって、とんかつの老舗で昼食をとる3人


「おじさんそう言えば配信見てたよ?テンションめっちゃ高かったねぇ。滅多に見ないテンションだったから驚いたって言うか面白かったよ」 

と揶揄うように勇騎がいう。


「そうそう!でもあのキャラかっこ良かったなぁ、黒と蒼のスーツでコートと手袋も似合ってたし、リアルでおじさんも着たら似合いそうなんじゃない?」


「グゥ・・このイベント終わったら長期休暇取れるからテンションが上がっちゃったの・・・あんなゴシックホストみたいな格好が似合う程良い面構えじゃないわい・・!」


「そんな事ないのになぁ・・身長あるしある程度筋肉もあるから似合いそうなのになぁ」


「この中年のおじさん褒めても何も出ないぞー・・・、んでおかーさんはいつ帰ってくるって?」


「あー、未定だって言ってたよ。なんか数カ国回らないといけないって言ってた。学校がオンラインだからどこでも大丈夫だから寂しいおじさんを癒してあげなさいって言ってたよ」


「ハァァぁ?!未定なの?! クソ姉貴がああああ。まあいいけどさ・・・お前らが良いならそれでいいや・・んじゃこの後追加で買い物していくか。後は家事当番だな。働かざるもの食うべからずだぞ?」


「「わかってるって」」


「昔からちゃんと手伝ってるじゃーん」

「そうそう」


「そんな拗ねるなって・・・、んじゃ行きますか」

(ってことはあれか、姉貴帰ってこない限り旅行いけないじゃん?!恨むぞクソ姉貴がああああああ)


3人が談笑しながらまるで本当の家族の様に買い物をする為に商店街へと消えていく。

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