俺は正義のヒーロー、まさか母親が悪の女幹部だったとは知らなかった。しかもその露出高めのコスは何だっ! 今年で42だろっ!
カワラザキ
第1話 俺はジャスティス・ホッパー
甲州ハタナカ・ファミリーランド。ギネス級アトラクションを多数擁する日本屈指のレジャーランドである。
日曜日の午後、本来であれば家族連れやカップルで賑わうはずだが、園内に客の姿はなくアトラクションも動いていない。
午後1時に開演のヒーローショー、
「マスクド・ライドァー、富士山大決戦。」
は大盛り上がりで、ちびっ子たちの歓声が鳴り響いていた。
ショーも佳境に入り、司会のお姉さんの掛け声とともにライドァーが現れるはずであったが会場に「イーッ!」という奇声とともに現れたのは黒ずくめの集団であった。
その男たちの姿を表現するならば「珍妙」がピッタリだ。目と鼻と口以外は全身を黒タイツで覆われ胸の部分には肋骨を模した黄色のペイントが施されていた。
ハッキリ言ってセンスのかけらもない。
彼らは誰もが恐れる悪の秘密結社ジョッターの戦闘員「ザコーズ」で、見た目のマヌケさからは想像もつかない戦闘力を秘めている。
ジョッターは総帥ドクター・アンノウンを頂点とする悪逆非道の秘密結社である。
ザコーズの出現により客はパニックになり皆逃げ出し園内にはBGMだけが虚しく鳴り響いていた。
「そこまでだ、ジョッター、」
「そ、その声は、ジャスティス・ホッパー。」「どこだ、どこにいる?」
ザコーズ隊員たちは口々に叫びながら辺りをキョロキョロと見渡す。
「あそこだ。」ザコーズの一人が指をさす。絶叫マシンの軌道上である。
そこには一人の男が立っていた。
身長186センチメートル、総重量体重込み270キログラム
エメラルドグリーンの強化タクティカルスーツはFグレードの防弾、耐爆性能を誇り、胴や肩などを覆うコバルトブルーのプロテクターは金属生命体シュピーゲルを再形成したものだ。シュピーゲルの外殻は30メガワットの電磁加速バレットをも弾き飛ばす。
両腕両足には同素材のガントレッドとレガースが装着してある。
そして頭部はモスグリーンのシュピーゲルヘルムに覆われ、深紅の複眼が煌々と輝いていた。
ヘルム内の有機ディスプレイは最大24倍望遠、サーモモード、暗視モードはもちろん、あらゆるシステムに侵入と可視化が可能だ。暇な時はアニメの視聴もできる。
外部連絡は骨振動によるソリトン通信で組み込まれた防毒システムは化学と生物はもちろん、核物質にも対応する。
その男は正義の味方ジャスティス・ホッパーと名乗る。
「トォーッ」
ホッパーはレールから飛び降りると、何故わざわざそんなことをするのかよくわからない無意味な伸身宙返りと捻りを披露して地面に降り立った。
正体は
「また性懲りもなく現れたわね、ホッパー。」
ザコーズおおよそ20人の集団の中に一人だけ赤い女が混じっていた。
ひときわ目立っている。
ジョッターの幹部、ママンダーである。
バスト108センチメートル、ウエスト62センチメートル、ヒップ94センチメートル、ド迫力の肢体に光沢のあるクリムゾンのボディスーツを纏い足元は黒のニーハイピンヒールを履き手には黒いムチを握っていた。
顔はパピヨンを模したマスケラで隠いているが、口元は丸見えで真っ赤なルージュが毒々しく蠱惑的である。
一応スーツは手首足首まで覆い肌の露出は無いものの、タイトすぎるゆえボディラインが露骨なまでに強調されている。ミサイル弾頭のごとき胸は重力に逆らって上を向き、腰はくびれてスズメバチのようである。そのくせ尻が大きく左右に張り出し、大殿筋のツートップも重力に逆らい盛り上がっている。
スーツが緻密でタイトすぎるためヘソのくぼみが浮き上がり存在感を示していた。
ママンダーはハスキーボイスで叫ぶ、
「ホッパー、今日がお前の最期だ、いでよっ、怪人ブタマジロン!」
安直なネーミング通り、豚とアルマジロを足して2で割った怪物がどこからともなく現れる。
「ぶひ、ぶひ、ママンダ様、オラ頑張るずら、ホッパーを倒したらご褒美お願いしますだ。」
「うむ、ホッパーを倒せば気が済むまでこのムチをくれてやる。」
「それとヒールでぐりぐりの方もお願いしますだ。」
「わ、わかった。必ず勝て。さあ、者共やっておしまい。」
「イー」
ジャスティス・ホッパーにザコーズ軍団とブタマジロンが襲いかかった。
「やっばかったなぁ、今週の怪人、あの豚みたいな奴、めっちゃ気合入っとったやん。鼻から気持ち悪い液だしよったぞ、久々に溶解液浴びたわ。まぁそんなんでシュピーゲルは溶けんからええけど臭いがたまらんかった。さて、今日のコレクションはと、」
将勝は自室でパソコンを操作する。クラウド上に保全してある今日のファイトの映像を確認して次の戦いに備えるのが目的だが、もう一つの大切な作業が女幹部ママンダーの今日のコスチュームの検証である。
正義のヒーローという危険かつ苦痛の伴う仕事を無償で引き受けているのはママンダーのエロいコスチューム動画の収集が出来るからである。
でなければ好き好んで辛くて痛い思いなどしない。
ママンダーは毎週衣装を変えて現れるので飽きが来ない。今日は肌の露出は抑えめであったが、とにかくボディラインの細かいところまでがハッキリと浮き上がっていたのでそれがかえっていやらしかった。
あのボディースーツの素材は何で出来ているか調査の必要がある。
何せ敵も最新技術を投入しているらしく、ホッパービジョンを駆使してもスーツやマスクの透視や解析までは出来ないのだ。
PCのモニターにママンダーの映像が映し出された。拡大させる。
エッロ! 将勝は毎度毎度感心するが、この胸メロン、いやちょっと小さいスイカぐらいありニップルが浮き出て丸わかりであった。
薄いタイツ越しに見せるところが「この女よくわかっている」と感心させられるポイントだ。
なまじダイレクトに見せるよりもこういった「生殺し見せ」の方が将勝のような上級者には効くのだ。
下半身はと言うと、アンダーヘアーがギリギリ見えるか見えないかの際どい透過率が秀逸だ。そしてデルタゾーンの丘陵地には実にわざとらしくハート形っぽい恥骨の盛り上がりを浮かび上がらせていた。
「反則だぞそれは、この女何考えてんだ? こいつ絶対変態だぞ。」
ママンダーのせいで思春期真っただ中、純情少年の将勝はまたもや賢者タイムを迎える羽目となった。
「ゆるさん、許さんぞママンダー。ピュアな俺の純情を弄びやがって、必ずやお前に正義の鉄槌を下してやる。」
将勝は湧き上がる怒りを鎮めるため内なる敵に戦いを挑んだ。今日はこれで4回目だ。
「ただいまー、マー君、遅くなってごめんねー。」
母スミレが帰ってきた。パソコンの電源を切る。
「おかえり、カレー作っといたよ。俺は先に食ったから。」
「サンキュー、できた息子でかあちゃん大助かりだよ。」
将勝は母子家庭だ。物心ついた頃には母しかいなかった。父親の顔は知らない。小学校低学年までは父親についてあれこれ尋ねたが教えてはもらえなかった。今となってはもう興味はない。
スミレは日本屈指の財閥企業テイコクで会長秘書として働いている。高給は保証されているが年中無休で日曜も仕事に出ている。
真面目で堅物、化粧っ気のない顔に分厚いいレンズの黒縁メガネ、いつも同じひっつめ髪、地味なツイードのジャケットに古いワイドパンツ。財閥系の会長秘書のくせに野暮ったく地味でダサい。
将勝から見て母親と言うバイアスを取り除いても女の魅力ゼロである。
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